⇒ 自然・科学系記事一覧

壁に絵や文字を描いたり隠し文字に使える変形画像(メタモルフォーシス)の作り方

絵や文字などを伸縮させて変形したものをメタモルフォーシスと呼びます。 お絵かきソフトのようなグラフィックソフトを使うと、縦や横の長さを伸縮することは容易に出来ますが、単純な規則で変形しても元の形が判らなくなるものがあります。

看板や壁に絵や文字を描くとき(メタモルフォーシス)

看板や壁に絵や文字を描いたり、文字を書くときには工夫するとおもしろいものが作れます。
たとえば、部屋の隅の角にまたがって1枚の絵を描くと、どこから見ても平面に描いたように形の整った絵には見えません。 これは、絵を見る位置と壁に描かれた各点との距離が甚だしく異なるためです。同じ大きさのものでも近くにあるものは遠くにあるものより大きく見えると同じです。
下の図を見てください。
変形図形メタモルフォーシスを描く理論説明図1
上左図は平面に格子模様を描いたもので、上右図は部屋の角に同じ模様を描いたものを、中央から見たものです。
上右図を見てわかるとおり、壁との距離が近くなる両端ほど縦横共大きく見えています。
そこで、絵を描くときには下の左図のように角から遠くになるにしたがって絵を小さく描きます。
下右図は出っ張っている角がある壁に描くときです。
角から離れるにしたがって見る位置から遠くなるの大きく描かないと同じ大きさには見えません。
変形図形メタモルフォーシスを描く理論説明図2
どのくらいの比率で大きく描くか、或いは小さく描くかは見る位置と壁の各点との距離を計算するか測れば求められます。
単純に、上左図なら距離に逆比例、右図なら正比例します。

実際の壁に絵を描くとき、計算で求めるのが面倒なときは、元の絵の上に方眼紙のように均等に縦と横に直線を引きます。
ひとつの四角形は正方形にします。
次に絵を描きたい壁の表面に紙テープなどを、やはり方眼紙のように縦と横に貼っていきます。
このとき、壁の絵を見る位置から見て、紙テープで作られた四角形が全て正方形に見え、かつ、大きさが同じに見えるように紙テープの位置を動かして貼り直します。
ここまで済んだら、元の絵に引いた線と壁に貼った紙テープの位置を一対一に対応させて壁に絵を写し取っていきます。
元の絵と壁の四角形を小さくすればより正確に描けますが、それだけ手間が掛かるので、対応する点がないところは目分量で描きます。
ただし、正確に描いても見る位置が異なれば計算どおりには見えません。

逆に、決まった位置から見ればちゃんとした絵が見えるというのもおもしろいので、自由研究の工作にする場合には、複雑な角をたくさんつくって、何処から見れば正確な絵が見えるか直ぐに判らなくして作るのもおもしろいです。
が、大きくなりすぎて学校に持って行けないですか・・・
描く大きさを計算で求める方法や模型の提出、自分の家のブロック塀に描いたときは作業風景写真などの提出はどうでしょうか。
このように引き伸ばしたり縮めたりして変形したものを、 メタモルフォーシス と呼びます。

下写真は公園の外柵に描かれたカルガモの親子ですが、外柵を正面から見ると横長写真のように何が描かれているか考えさせられます。しかし、道路を通行している方には直ぐに判ります。
公園の外柵にメタモルフォーシスで描かれたカルガモの親子の写真
変形図形メタモルフォーシスでもっとも身近なのは路面に描かれた交通標識です。
変形図形メタモルフォーシスで道路面に描かれた「止まれ」の写真
遠方から見ると上写真の様に縦横の比率がほぼ同じに見えますが、近くで見ると縦長に描かれています。車は急には止まれないですから遠方から見たときに読めるように変形して描かれています。制限速度の表示なども縦長に描かれています。

凸面鏡や円柱状の鏡を使うと難しい変形が出来ます。

身近にある曲面鏡を使って図形を変形した写真

上の左図は道角にあるカーブーミラーに映っている風景です。
鏡の周辺部ほど歪んでいますが、歪むことによって広い範囲を鏡に映し込んでいます。
カーブミラーは中央が出っ張っている凸面鏡です。 自動車に付いている鏡はほとんど凸面鏡で、広い範囲が見えるようになっています。
上の右図は、表面が鏡になっている円柱に方眼紙のように縦横に直線を引いた図を映したものです。
ラベルが巻いてあるだけの果物の缶詰のように 外側が反射している缶などで実際に見られます。
このように絵を映して変形させるのは簡単なのですが、逆に、円柱状の鏡に映して綺麗に見えるような図形を描くのは難しいです。
円柱状の鏡に真横から入射した光は、下図のように反射します。
円柱状の鏡を使って図形を変形するときのしくみの説明図
位置Pでの接線の傾きは円の方程式を微分すると求められます。
位置Pと円の中心Oを結んで延長した線と接線は90度の角度で交わります。
この直線を法線と呼び、入射角と反射角との関係は図のようになります。
法線と入射角や反射角を作る直線の方程式の傾きは、ベクトル計算の内積を使って求めます。
円柱状の鏡に映る像を見るときは上方から見るので、視線で円柱を切断した楕円で上図のような関係になります。
先ず、楕円の方程式を求め、接線を求め・・・という手順になるので、円柱状の鏡に綺麗に映る絵を計算で作るのは難しいです。
実際に円柱状の鏡に映る像を見ながら想像で描くのも難しいでしょう。昔は「隠し絵」として流行したそうです