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簡単なパン焼き器

ここで紹介するパン焼き器は戦後(第二次世界大戦後)、食料や物資が不足していたときに実用化されていたものです。

そんな時代ですから「パン」と言っても今のようなふかふかした食感のある美味しいものではありません。
しかし、簡単でおもしろいので、昭和40年代の小学生向けの工作図鑑などに掲載されていました。ただ、家庭に送られている電灯用100V電気を直接扱うので現在ではかなり危険な工作実験となっていますから、電気知識のある人の指導下で行うようにしてください。
実を言うと、私は感電が怖いので実験できません。

パン焼き器は下図のように簡単です。
その他に、100V電灯線用挿し込みプラグが付 いたコードが1mぐらい必要です。
昔々のパン焼き器の説明図
木板か牛乳などの紙パックを切って長方形の箱を作り、箱の内側にベーキングペーパーを敷きます。
木箱や紙パックなどの代わりにケーキ型などの金属製の容器は使わないでください。

次に、側面の2面にネジを付けた薄いアルミ板を入れ、この箱の中に市販のホットケーキミックスと重量比1~3%程度の食塩を入れて水で溶いた生地を入れます。
そして、両側面に置いたアルミ板に100V電灯線用挿し込みプラグが付いたコードの端を繋ぎ、 (アルミ板に付けたネジで被覆を剥いだコードの端を留めて接続します)

アルミ板や生地に触れないように注意しながらプラグをコンセントに挿し込みます。
これで条件が合えば、20~30分後にパンが焼き上がります。
パンが焼き上がっても両端のアルミ板には電圧100Vが掛かっていますから、プラグを抜いてからパンを取り出してください。

パンが焼ける理由は水で溶いたホットケーキが電気抵抗になってジュール熱が発生するからです。
ジュール熱は、抵抗体を流れる電流の二乗と抵抗の積に比例して発生します。

パン生地に電気を流して発熱させるしくみの図
ですから、ホットケーキミックスを水で溶いたものがある程度大きな電流を流してくれないと多くの熱が発生しないので焼けません。
そこで、水に溶かすとイオンになって電子を運ぶことが出来る食塩を適量入れています。
食塩の量を多くすれば電気は良く通るようになって発熱量は増してパンは早く焼けますが塩辛くて食べられません、逆に食塩の量を少なくすると電流の大きさが小さくなってパンが焼けなくなります。

上記説明でお解かりかと思いますが、パンが焼けると水分が無くなるので電気抵抗が増し、その結果、発熱量が減るのでパンが焦げることはありません。
また、交流の代わりに直流を使うと、食塩が電気分解されて有毒な塩素が発生するので気をつけてください。