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カビをテーマにした自由研究の方法

カビの自由研究で最も簡単なのは、家の中からカビを探して「○○には△△カビが生えていた」という観察記録を作ることでしょうか。
最低限、顕微鏡とカビの図鑑、スケッチ道具が必要ですが。
時間があったらというか、観察記録が集まってくると、「△△カビは○○が好きらしい」とか、「アルミニウムにカビは生えるのか?」などという疑問が湧いて次の研究課題が浮かんできます。
身近に見られるカビの種類
カビを探し歩くのが嫌な人は湿った所にパンを置いてカビが生えてくるのを詳しく観察するのはどうでしょう。

顕微鏡を持っているなら、プレパラート用ガラスの上に寒天培地を作り、この培地に空気中を浮遊しているカビの胞子や菌糸が付着してカビが成長するのを顕微鏡で観察記録 するのはどうでしょう。
プレパラート用ガラスの上に培地を作るのは、カビの姿を壊さずに観察するためです。
生えているカビを針などで採ってプレパラートに載せて顕微鏡で観察するのではカビの姿が壊れてしまいます。

寒天培地 というのは、食用の寒天を水で煮溶かした中に栄養分や薬剤を入れて、羊羹のように固めたものです。

簡単培地の例です。
○ジャガイモ・ブドウ糖の寒天培地
(PDA培地 Potato-Dextrose agar)

  1. 洗って皮を剥いたジャガイモ200グラムを細かく刻んで、1000ccの精製水を加えてよく煮る。
    煮崩れるまで煮てからきれいな布巾で濾し、この液に精製水を加えて全量で1000ccにする。
     
  2. 1で作った液に寒天粉15グラムを加えて煮溶かし、ブドウ糖10グラムを加えてシャーレのような小皿に分けて固める。
    この後、細菌を絶滅させるために高圧高温で滅菌(121度C、15分間)したり、乳酸や酒石酸を加えて酸性にするのが正式ですが、家庭では無理なので省力しましょう。

どうしても滅菌するなら調理用の圧力釜、或いは蒸し器で、2時間おきぐらいに数回蒸します。
この方法は、家庭で食品の瓶詰めを作るときの滅菌方法です。

ジャガイモ以外にペプトン(タンパク質を加水分化して消化しやすくしたもの)10グラムを入れる方法などがあります。

肉や野菜の煮汁にもカビが生えてきますから私たちの実験レベルでは材料にこだわる必要はありません。
逆に培地の材料にこだわって、カビの生えやすさ生えにくさを研究するのも良いですが、この場合は、温度や湿度などの環境を同じにしておかないと、培地に含まれる材料の差異でカビの生育に変化が出たのか、環境によって出たのか判らなくなりますから、幾つもの種類の培地を同時に作って同じ場所に置くことです。

カビの大きなコロニーを作るなら、シャーレや小皿などに寒天培地を入れて固め、 高湿な場所に置けば良いのですが、プレパラートに培地を作る場合は、熱い培地の溶液をプレパラート用ガラスに垂らすとガラスが割れる可能性があるので、寒天溶液は出来るだけ冷まし、ガラスを逆に温めておきます。

そしてガラスの上に作った培地が冷めてから観察したい種類のカビ近くにそれを持って行って菌糸や胞子を付け、培地が乾燥しないように濡らしたティッシュペーパーなどと一緒に小箱に入れ、時間を決めて取り出し観察します。

プレパラートに作った培地に作ったカビを顕微鏡で観察するときはカバーガラスを掛けないで低倍率で見ます。
カバーガラスを掛けるとカビが押しつぶされてしまいますし、低倍率で見ないとピントが合う部分がほんの一部にしかなくなる上に、レンズとカビが接近するためピントを合わせているときに誤ってレンズにカビを付着させてしまいます。