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植物の種類はなぜ多いか?

【植物の種類はなぜ多いか?】を話題にしたいと思います。
私が前からに気にしているタンポポやスミレの種類の多さにちょっとでも突っ込めればと思っています。

変化には、環境によるものと、遺伝子の事故によるものがあります。
環境によるものは“環境変異”とか“彷徨変異”と呼ばれます。
熱帯地方に生息している生物が温帯地方でも生きられるようになった場合とか、肥料(餌)を与え過ぎて大きくなった場合、塩分が多い土地・乾燥地でも育つようになった植物などがあたります。
遺伝子が変化していないので環境が元に戻れば、少なくても次の世代以降には変化も元に戻ります。

遺伝子が変化したものは“遺伝的変異”と呼ばれます。
生物としての性質を親から子へ伝えているのは、周知 の通り“DNA(デオキシリボ核酸)”です。
DNAは4種類の塩基(注1)アデニン・グアニン・シトシン・チミンの組み合わせで作られた大きな分子です。
この組み合わせが生物としての性質を決めている訳です。

DNAは自己複製能力を持ち、これによって自分と同じ性質を持つ殖やすための細胞を作って子供に伝えていくのですが、間違いは何処にでもあるもので、自然界では1千万回から10億回に1回の割合で失敗しているそうです。
これは“遺伝子突然変異”と呼ばれます。
DNAの写し損ないの他に、DNAが細胞内で形作っている“染色糸”が細胞分裂の時に作り損なう場合は、“染色体突然変異”と呼ばれます。

ところで、DNAの塩基(アデニン・グアニン・シトシン・チミン)は連続する3個が1組になって機能しています(注2)
そのため、DNA上の塩基1個のコピーし損ないが3個に影響を及ぼし、この生命体は致命的な損傷を受けます。

コピーのし損ないは、もっと狭い範囲内の分子レベルで起こることもあります。
人間以外の動植物の場合は、自分自身を増やす機能と環境への適応力を持ちあわせていたら、新しい種類、変異種となれる可能性があります。
特に植物の場合は多様な方法で個体が増やせるので花や葉の形・色の違うものが多く存在する訳です。

DNAは細胞内では、“染色糸”と呼ばれる構造になっていますが、細胞分裂する時には“染色体”と呼ばれる構造になり、この時にDNAのコピー同様に失敗することがあります。
染色体の一部が欠けたり、分断されたりする訳です。

通常、生物はその生物に固有の染色体数を持っています。
それを1セットと呼ぶと、オスとメスが存在して新しい個体が出来る場合は、染色体は、オスとメスの染色体から1セットづつ貰って2セットになります。
人間の場合は、染色体数46で2セットになっています。

染色体で事故が起きて、2セットのはずが3セットになったりしたらどうなるでしょう?
殖えるための細胞を作るためには染色体を分けなければなりませんが、3セットでは分けられないのでこの細胞は増えることが出来ません。
ですから、多くの動物の場合は染色体で事故が起きて3セットの生命体が出来ても個体を増やせないまま死に、新しい種類・変異種は出来ない訳です。

一方、植物の場合は“挿し木”や一株だけで殖える、動物には考えられない増殖方法”を出来るものが数多く存在するので偶然出来た3セットでも個体数が増やせる場合が多いです。

これからの季節に欠かせないスイカの内、種ナシと呼ばれる物は染色体が3セットのため、種が出来ない訳です。
種ナシスイカの場合は、2セットと4セットのスイカを交雑させて3セットにするそうですが、当然、交雑は自然界でも頻繁に起こり、5セット、7セットの植物体もあります。
また、セット数と種類の違いは必ずしも一致しません。
セット数が異なっても同じ種類に分類されていることもあります。

注1:塩基
酸と反応して塩をつくる物質。
水に溶解すると水酸化物イオンを生ずる。
アルカリ金属元素やアルカリ土類金属元素の水酸化物、アンモニアなど。
広い意味では、他の物質から陽子を受け取る物質を塩基と定義する。
注2:コドンと呼ばれる