# 在来種タンポポの生き残り策
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在来種タンポポの生き残り策

“在来種タンポポを絶滅や雑種化から守るために小学生を動員して外来種タンポポを抜いている”という新聞記事が目に入りました。
(セイヨウ)タンポポは、たくさんの種一つ一つが風に乗って遠くの地に着き、そこが荒地でもまた株になって花を咲かせる生命力の強いものです。
それで「タンポポの様になりたい」とか「タンポポのようになって欲しい」という人さえ居るくらいですから人海戦術で抜いても効果は一時的ではないでしょうか・・・

以前、当マガジンに書きましたが、在来種タンポポが減ってしまったのはセイヨウタンポポに攻められて駆逐されたのでは無く、人間が在来種タンポポの生育地を減らしてしまったのです。
在来種と外来種のタンポポは生き方が違います。

在来種減少の理由を、人間が在来種の生育地を減らしたからと主張する根拠は夏季にあります。
夏季に繁茂している雑草を刈ってしまうと地表やその近傍が真夏の太陽で地温が上昇してしまい、暑さに弱い在来種は弱ってしまいます。
一方、外来種は夏季でも花を咲かせるぐらいですから地上部を刈られても成長できます。
その上、セイヨウタンポポは一株でも殖えるので刈られて個体数が少なくなっても容易に種を作ることが出来ます。

私が住んでいる所では少なくとも、カントウタンポポ、エゾタンポポ、シロバナタンポポ、セイヨウタンポポが見つけられますが、畑の縁など年に何度も人為的な手が加わる所にセイヨウタンポポ、小川の堤や神主さんの居ない小さな神社内にエゾタンポポが多いです。

ここまで書いてニュースの見出しを見たところ、「関東のタンポポ、4割クローン…セイヨウ生き残り図る」(読売新聞) - 5月12日とありました。
関東地方で採取した種370粒の6割がカントウタンポポなどの在来種とセイヨウタンポポの雑種で、その内の7割が同じ遺伝子を持つセイヨウタンポポの雑種で同じ遺伝子を持つクローンだったとのことです。
以前から在来種と外来種のハーフが生まれているという話はあったので、雑種には驚きませんでしたがクローンにはちょっと驚きました。
しかし、「セイヨウが生き残り図る」は間違いだと思います。
在来種タンポポがセイヨウタンポポの力を借りて生き残りをかけたのではないでしょうか。
自分一株だけで殖える方法は環境変化に対応できずに弱いと言われますが、現時点では有効に働き、且つ人間が壊した環境に適しているセイヨウタンポポに入り込んだ方が在来種タンポポに良かったのだと思います。
気候が変わってセイヨウタンポポが生きづらくなったら在来種タンポポの遺伝子の活躍が見られるかも知れません。

冒頭、在来種を守るために外来種を抜いている話を書きましたが、人間が在来種の生活し難い環境を作ってしまったので、外来種が蔓延ったり、雑種が増えるのではないでしょうか。
雑種化は生き残るために生物が選んだ手段です。
タンポポに関しては、雑種化を防ぎたければ在来種の好む環境を作る方が先決です。