日食、それは神の悪戯か

古代を模したドラマなどで日食や月食を予想する人が出てくることがありますね。
彼らは神が怒っている証明や王の力を誇示するため、或いは自分たちが危難から逃れるために利用する訳ですが、どうして日食や月食が起こる日時を知ることが出来たのでしょう?

これには、チグリス・ユーフラテス川の下流に、紀元前12世紀から紀元前539年ペルシャに滅ぼされるまで栄えたカルデア人(バビロニア)の功績があります。

カルデア人は天体観測に優れ、日食や月食が起こる周期(サロス周期)を発見しました。

その説明の前に、[太陽―月―地球]という順で一直線にならんだときを「内合」 と呼びます。
日食は、内合で、且つ、各天体の水平面の位置(黄緯)が等しくなる必要があります。
或る時刻にこの条件を満たすと次は18年11.3209日後になり、これをサロス周期と呼んでいます。

日食は新月のときに起こるのですから、長期間誤差が無く使える暦が無かった古代の人々には、サロス周期を新月から次の新月までの朔望月で数えた方が簡便だったと想像できますから、朔望月(平均29日12時44分)で表すと223回分になります。

ですから、過去の日食が起きた新月から223回新月を数えればよいわけです。
ただ問題が起こります。
サロス周期の11.3209日の端数の約0.3209日です。
これは、次の日食が起こる地域が端数分(120度)だけ西にずれることを意味します。
このため、同じ場所で次に日食が起こる日時を知るには1サロスを3倍します。
即ち、223×3回新月が来る日、前回の日食と略同様の日食が同じ場所で見られることになります。54年と34日後です。

例えば、2008年8月1日 礼文,、利尻、対馬で部分帯食でしたが、3サロス周期経った2062年9月3日にも部分帯食になります。
(帯食というのは、日食や月食の状態のまま出たり没したりすることです)

サロス周期は太陽・月・地球の相対的な位置関係だけでなく、天体間の距離もほぼ前回と同じになるという不思議なものです。