進化論・調節遺伝子の変異

現在もダーウィンの提唱した進化論は、その後、遺伝学者・博物学者・古生物学者などの意見を統合して1937年頃に“総合説”と名を変えて生き続けています。
この総合説で説明できないものの一つに『化石の断続』があります。

『化石の断続』とは、発見される化石に生物が徐々に変異した痕跡が無いという意味です。
突然、化石として発見されなくなる生物があると思えば、突然、まったく別の生物の化石が発見されるという疑問です。
このメルマガを続けてお読みいただいている読者の方はお気づきだと思いますが、 ダーウィンの頃にも問題になっていた事が化石の年代測定技術の進歩、“分子生物学”の発達に従って再浮上してきたのです。
“総合説(ダーウィンの流れを汲む)”の弱点には、化石記録の断続の他に、遺伝子の突然変異を繰り返す実験を重ねても新品種が出来ないということもあります。

これらの問題に対して、分子生物学から提起されている解決案は、『調節遺伝子』の変異です。
『調節遺伝子』から説明します・・・・・
生物の細胞全てに、各器官を作る遺伝情報が組み込まれています。
最近は、人工臓器などを作る目的で、どの器官にもなれる『根幹細胞』が話題になっていますが、 全ての細胞は最初の1つの細胞から分化して増えた結果ですから、全ての細胞に生命体の全ての情報が組み込まれているのは理解できると思います。
しかし、他の器官を作る情報を持っていても目的の器官しか作りません。
例えば、花びらを作っている細胞が根を作ったりはしない訳です。
この遺伝情報を操作して目的の器官を作らせている遺伝子が『調節遺伝子』と言われるものです。

調節遺伝子は、生物を作る遺伝子(構造遺伝子)をコントロールしているのですから、調節遺伝子が変異した方が変化は大きくなる訳です。
社員1人が変るより、社全体をコントロールできる社長が変った方が会社としては変化が大きいのと同じです。

調節遺伝子の変異が起こる場所も重要です。
今、働いている調節遺伝子が変異を起こし、奇妙な変異だったら生命体そのものが死んでしまいます。
調節遺伝子の変異は、遊んでいる遺伝子で起こります。
(働いている遺伝子より遊んでいる遺伝子の方が遥かに多い)
遊んでいる遺伝子がどんなに変異を繰り返しても表に出ることはありません。
表に出ないのですから自然淘汰を受けることもありません。
変異で出来上がった調節遺伝子が表に出る時は、今、働いている調節遺伝子の能力を乗り越えた時です。
この時、生物が外観を含めて一気に変る可能性があります。

この説を採れば、化石に徐々に変異した痕跡が見つからない理由になり、今働いている調節遺伝子を乗り越えるには相当な時間が必要だとも理解できる訳です。
この説は分子生物学の発展に支えられているのですが、その根底に流れている思想は、 “自然は無駄が無く、合理的なものだ”というものです。
例えば、自然の造形物の多くは、球状・筒状・三角形のように最小の材料で最高の強度が得られるものになっていますし、物が動くときは最もエネルギー消費が少ない経路を通ります。
この考えに立つと、ダーウィンの進化論とその流れを汲む総合説は無駄が多く不合理となります。
突然変異で生命体が作られても自然淘汰されてしまう方が多いのですから無駄が多いということです。