脱皮

先ず、脱皮の目的です。
一般的に、身体の成長に合わせて脱皮すると思われていますが、寿命の長い動物の場合は、傷ついた皮膚や破損した手足、触覚等を生まれ変わらせるためにも脱皮をします。

例えば、ヘビ(蛇)の場合は、成長後も、最低年に4,5回は脱皮します。
草むらや薮の中をクネクネ歩く(?)のですから皮膚が傷つきますし、また、眼を保護するマブタ(瞼)が無いので眼も傷みます。
そのため、蛇は眼の表面にある保護膜まで一緒に脱皮して新品に換えます。

カニ(蟹)の場合も、成長期には10日に1度程度の早いペースで脱皮しますが、成長後は年に4,5回になり、失った脚などは3,4回の脱皮を繰り返して再生します。

次に、「殻の内側に新しい殻を作るのなら、どんどん小さくなってしまう!」
これは、ザリガニの脱皮を見たIさんの姪御さんが投げかけた疑問です。
考えられるパターンとして、

  1. 新しい皮が柔らかい内に成長する。
    新しい皮が硬くなる日数ですが、イワガニの場合は、甲羅の前の部分が3日、ハサミが9日、脚が30日という観察があります。
    一大事業である脱皮の割に日数が有るで、このパターンを採る動物も居ると思います。
  2. 新しい皮は折りたたまれていて、脱皮後ひろがる。
    カブトガニがこのパターンです。

これは私の想像なのですが、1、2の場合でも体液を注入して皮(甲羅)を膨張させるか広げると思います。
チョウ(蝶)やトンボが羽化(蛹から成虫へ)する場合には、羽に体液を注入して羽を広げてから乾かして硬くします。

脱皮あれこれ

  • カブトガニ
    エラ(鰓書)や消化管の一部の外皮まで脱皮する
  • ヤドカリ
    毛の1本から口から胃までの外皮も脱皮する
  • トカゲ
    脱いだ皮はバラバラになるので、ヘビのように身体全体の脱皮殻はない
  • カエル
    皮は薄く、水中で脱皮する場合が多いので脱皮殻は見つからない。
    脱皮殻を食べてしまうカエルも居る
  • ガラガラヘビ (北米から南米にかけて棲息)
    尻尾の部分だけ輪状に抜け殻を残し、尻尾を振ると、その抜け殻が擦れて警戒音を出す。
    脱皮する度に、尻尾には輪状に抜け殻が増える。
  • オビヤモリ (北米南西部、メキシコ北部に棲息)
    脱皮殻を食べてしまう

また、脱皮は成功するとは限りません。
エラ(鰓)や消化管の一部まで狭い意味で脱皮する動物ほど、失敗して死ぬ確率が高くなるようです。

ところで、“脱皮”と言うと、下等な動物のものと思われますが、広い意味に解釈すれば、私たち人間も脱皮しています。
肌をこするとアカ(垢)が出ますが、アカの中には死んだ皮膚表皮が含まれていて、これが脱皮した殻です。
体内で死んだ細胞は分解されて吸収されますが、汚い外部に触れている表皮の細胞は外に捨てるのが衛生的です。
また、カブトガニやヤドカリが消化管の一部も脱皮すると書きましたが、消化管(口内、食道、胃、腸など)の内部は、身体の外部ですから脱皮しても不思議はありません。
人間の場合も消化管表皮(管の内側、食べ物や消化液が触れる部分)の細胞は数十時間から数十日で新しいものに入れ替わるそうです。
これも広い意味では脱皮です。