フクジュソウ(福寿草)は毒草

暮れから正月にかけて、園芸などで目にする植物に福寿草があります。
縁起物として、松やナンテン、マンリョウなどと一緒に並べられているので、ご存知の方も多いと思います。
福寿草は関東以北、特に北海道に自生が多い植物で、福寿草という名の由来は、この花が咲く時期から来ています。

その開花時期ですが、正月用に市販されているものは促成栽培されたもので、自然状態では、本州以南は旧暦のお正月頃に咲きます。
旧暦ですから今の暦にすれば1ヶ月以上は遅れていて、今の暦で2月半ば辺りになると関東以南では日増しに春めいた頃が旧暦のお正月に当たるわけで、 旧暦の正月は草木が芽吹き始め、長く寒い冬に別れ春を告げる大切な行事になります。

その正月前に福寿草は地面から芽を出し、他の植物よりいち早く金色(黄色)の花を付けます。
しかも、おめでたいことに葉が出るより花が先に咲き始めます。
農業や狩猟などの自然の恵みだけで生きてきた昔の人々にとっては、この花は、春の暖かさから来る生命活動の躍動と秋の収穫を想像させたにちがいありません。
それは、正に福寿の意味である幸福と長寿です。

自生が多い北海道では、本州より冬が厳しく、春の訪れも遅いだけにより実生活に密着していて、 北海道の先住民であるアイヌの人たちは、福寿草が咲き出す頃、サケ科の魚であるイトウが川を遡ってくるので、「チライアッポ(イトウの花)」と呼んで福寿草を開花を待ち望んだそうです。

福寿草の別名は、
  • 「朔日草(ツイタチソウ)」、「元旦草」
    旧暦のお正月頃に開花するため
    朔日は、太陰暦の1日(月初め)
  • 「側金盞花(中国名)」
    黄金色の花を金の盞(さかずき)に見立てた

学名は、「Adonis ramosa 」
Adonis は、ビーナスに愛されたアドニスが猪の牙に掛かって死に、その血の中からこの花が生まれたというギリシャ神話に拠ります。
セイヨウフクジュソウの花は、血を連想させる赤色だそうです。

このおめでたい福寿草も「毒草」です。
全草、特に根茎にクマリンなどの有毒成分が含まれています。
毒と薬は紙一重と言われるように強心や利尿薬に使われますが、強心剤になっているということはかなり危険な毒草を意味しています。
キンポウゲ科は殆どが毒草です。