2018年火星大接近

今日2018年6月30日1日21時半頃、23時過、何気に外に出たら月の真下方向(南側)に赤い星が見えました。
明るい星というと、木星や金星を思い浮かべるのですが、赤い星は火星です。
現在の火星の光度は、マイナス2.8等。金星はマイナス4等なので金星には及びませんが薄い雲なら見える光度です。
赤さで火星に対抗する星と名づけられた、さそり座α星アンタレスの光度はプラス1.1なので敵わないとみたのか、2時頃沈んでしまいます。

今年2018年8月1日頃、地球と火星は、0.3849AUまで近づきます。
AUというのは、Astronomical Unit の略号で、太陽と地球の平均距離約1億5000万キロです。

火星というと、惑星の運動に関する経験的法則「ケプラーの法則」を導いた惑星として有名です。
ケプラー(Johannes Kepler 1571-1630)は、彼の雇い主だったブラーエ(Tycho Brahe 1546-1601)の死後、
ブラーエが遺した観測記録を見ることを許され、火星の精密な観測記録から惑星の運動法則を発見しました。
惑星の運動法則を見つけるのに楽な惑星は何か?
と考えてみると、観測しやすくて変化が大きい惑星が向くでしょう。

太陽系の惑星は楕円軌道です。円と楕円との乖離の程度を示す離心率と公転周期で五大惑星を見ると、
水星は、0.20563 約87日
金星は、0.00677 約225日
地球は、0.01671 約365日
火星は、0.09341 約687日
木星は、0.04851 約11.8年
土星は、0.05552 約29.5年 
水星は離心率は大きいですが、 太陽に近いために日の出直前と日没直後しか見えず、かつ、高度が低いために靄や雲で見えないことが多いので有名です。
金星は光度が大きく、観測は容易ですが、離心率が小さすぎます。
木星は光度が大きいので観測は容易ですが、公転周期が長すぎて人生の内では何回も太陽の周りを回りません。
土星は光度が小さい上に公転周期が長すぎます。
こう考えると、ケプラーが火星のデータを使った事は必然だったのでしょう。

ブラーエは小さな変化を大きく変える傾斜メモリを観測機器に使用するなど肉眼での観測記録に貢献、ケプラーは数学者という面を持っていたことが惑星の運動法則に導いたことは明らかです。
ケプラーはブラーエの弟子と言われることがありますが、ブラーエが死去するまで観測記録を見ることが許されなかったほど冷遇されていました。
しかし、このことが、彼の名を天文学史に大きく残したのかも知れません。

ところで、ギリシャ神話では、火星はアレスで戦の星ですが、火星がその名を頂く前の戦の星は金星でした。
金星の住人はいつも戦争して街を焼いているから金星は明るく見えると思ったのでしょう。
その金星が戦の星を火星に譲ったのは人々の世界観が変わった証かも知れません。
世界が狭いときには近くで起こったいざこざが大きく見え、世界が広ければ近くで起こったいざこざなどは良くあることになってしまいます。
火星が明るく見えるときは今回の様な地球に大接近のときで、大接近は15~17年の周期でやってきます。
感覚的には、大きな戦はこのくらいの周期で起こるようになったのでしょう。

戦の星を火星に譲った金星は愛欲の女神アプロディーテーの星となります。
戦と愛は一見対極にあるように見えますが、いつも同居しています。
「可愛さ余って憎さが百倍」と言いますし、
戦争を忌避すれば自分や家族が自国の権力によって殺されますから戦うのは結局は自分や身近な人への愛のためです。
また、権力や病気との戦いに敗れて引き裂かれるほど、人々は愛を感じますし