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枇杷と、種からの発芽 実生

2023年10月20日作成 2024年6月26日更新

今年2023年7月枇杷の種を蒔きました。
数年前まで家の片隅に実生から育てた枇杷が食べ切れないほど実を付けてくれていたのですが、大きくならないように毎年枝を切り詰めるのが苦になって枇杷の木を枯らしてしまいました。
枇杷は、毛虫が付きませんし、特に肥料を与えなくても美味しい実が成りますから、敷地が広くて大きくなっても構わなければ手間要らずで良い果樹です。
もっとも、2階の屋根を超えてしまう様な品種を放任していたら始末に負えなくなります。
実際、見掛けたのですが、2階の屋根を超える高さになっている枇杷は実がなっても手が届きませんから鳥の餌を作っているようなものです。
切り倒すにしても、庭で高さが10mにもなっている木ですから容易ではありません。

枯らしてしまった枇杷を再び育てようと思ったのは、枇杷の葉のお茶が健康維持に役立ちそうだからです。
大寒の頃に枇杷の葉の厚いものを採取して乾燥させてお茶にし、味はウーロン茶みたいだそうなので飲みやすいでしょう。
家の片隅に枇杷の木を植えていた頃は実を食べるだけで、あの虫も付かない部厚で硬い葉が健康茶になるなどとは思いもしなかったので、大きなごみ袋何袋も棄てていました。
食い気より健康に気遣う年齢になって枇杷を見直しました。
という次第で、今年の収穫した実から採った種を蒔いたのですが、蒔いてから約3か月後でようやく4cmぐらいになりました。
枇杷は、亜熱帯や暖地の植物なので、2,3か月間冷やして休眠から目覚めさせる休眠打破は必要ありません。冬季がある所が原産の植物は、地面に落ちて直ぐに発芽したのでは冬に枯れてしまうので種は休眠して一定期間冷たさを味わった後に暖かくなったのを条件に発芽します。
枇杷の発芽 3か月目 2023年10月20日撮影
上写真は、2023年10月20日撮影
この写真の幼木は夜間は屋内に入れて置いたのに1か月後の11月に枯れてしまいました。 11月になって他の種からも幾つか芽が出ましたが気温が低かったためか下写真の、3cmほどになった1芽だけ残して枯れてしまいました。
種から発芽した枇杷 2024/01/01
(2024年1月1日撮影)
同じ枇杷の木から採取した種ですが、発芽時期は異なり、低温に対する抵抗力も違うようです。この幼木が無事に育って低温に強い成木になれば、挿し木などの栄養繁殖で作られるクローンには無い強みです。



しかし、種から枇杷を栽培した場合は実が成るまで10年ぐらい掛かります。庭に植えた場合は放っておいても大きくなるので手間はかかりませんが、実はともかく葉を採取出来るようになるまでの数年でも 、健康を気遣う年齢になってしまうと長過ぎます。
ホームセンターなどの果樹苗木売り場には、柿や柑橘、葡萄などの苗木は数多く置いてありますが、枇杷は樹勢が強くて高木になってしまうせいか、置いてある店でも数本でした。
当地は。雪は年に1,2度降るか降らないかですが、氷が張る所なので、寒さに比較的強い“田中”という品種の接ぎ木苗が向いています。
ところが、近場の売り場に置いてある“田中”の苗木は挿し木苗ばかりでした。
接ぎ木苗は、台木用に実生から鉛筆ぐらいの太さまで栽培し、実を付けるようになった枇杷の木から枝を採って台木に接木します。挿し木苗に比べて手間が掛かるので挿し木苗が多いのでしょう。
挿し木苗は根張りが悪くて台風などの強風で倒木することがあるとか、鉢植えで栽培するつもりなので倒木の心配はないですが、問題は実が成るまでの期間です。果樹苗としては枇杷は高価なので買うなら早く実が付いた方がよいです。

果樹売り場を物色していて、幹部分を見ていてふと見上げましたら日除けの黒いネットに隠れていた枇杷の蕾が目に入りました。
早生種で大きな実が成る“クイーン長崎”という枇杷でした。
クィーン長崎という品種の枇杷の苗木 2023/10/20購入して撮影
上写真は今回購入した枇杷の苗木(クィーン長崎) 鉢底から蕾までの高さは約150cm

枇杷クィーン長崎の苗木に付いた蕾 2023年10月20日撮影
上写真は購入した枇杷“クィーン長崎”の苗木に付いていた蕾 2023年10月20日撮影

“クィーン長崎”は苗木が大きかったので“田中”や“茂木”より1.5倍ぐらい高価で、また、暖地向き品種ですが、鉢植えで寒い日は屋内退避だからと買いました。蕾が付いているのは魅力です。
同じ“クィーン長崎”で価格は同じで大きさは大して変わらないのに花芽が付いていないものがあったので、同じ品種なら同じ年数で実を付ける訳ではありません。 枝によって花を付ける時期が違うのは環境変化が遭っても子孫を残す確率を高める生存戦略です。 また、植物には生長点の細胞が突然変異を起こして元の木とは形質が異なる枝になる“枝変わり”があり、枇杷にも枝変わり品種(本間)があります。
購入した枇杷みは葉が少ないので蕾を減らさなければ大きな実は成りませんが、これから寒い冬がやって来るので蕾は取らないでおきます。寒気で落ちてしまう花や幼果があるでしょうから、小さくても一つでも実が成ることを期待して

枇杷の花と受粉

2023年10月30日花が咲き始めました。
枇杷の花2023/10/30
枇杷は、同じ花の中に雌蕊と雄蕊がある両性花、他の株の花粉が無くても種子が成る自家受粉なので、花粉を付ける昆虫(気温が低い時季なので主にミツバチ)が棲息している環境では受粉に手が掛かりません。
庭隅に枇杷を植えていた頃は花が咲いたのも気に留めることも無くたくさんの実を付けてくれました。
しかし、買ったばかりの鉢植え枇杷では花数が少ないので昆虫は来ないだろうと人工授粉をしていました。
ところが、枇杷の花に蜂が留まっているのに気づきました。
枇杷の花にとまったミツバチ2023/11/06
枇杷の花は匂いを放ちますが、幾つも咲いていないのに「よく来てくれました」です。
ミツバチが留まっているのを観察すると、枇杷の花はミツバチぐらいの大きさの昆虫が頭を突っ込んで蜜を吸うのに適した形で、蝶では蜜を吸いづらそうです。

12月になると受粉に成功した子房が大きくなり始めました。
子房が大きくなり始めた枇杷 2024/01/01
(2024年1月1日撮影)
枇杷の蕾は房状に付いていましたが、子房が大きくなり始めたのは房状の先端の蕾ばかりでその他は落ちてしまいました。
たくさん花が咲いても殆どは虫を呼ぶ役割だけのようです。
5月に実が黄色く色づいて来ましたが、冬の寒さで実が落ちると思って摘果しなかったのですが夜間だけ暖房の無い玄関内に入れたのが良かったのか全く落ちず、小さな実になってしまいました。

上記の“クイーン長崎”が何とか実り、2024年5月にその種を鉢に蒔いて日陰に置きました。
すると、1か月ちょっとして芽が出て来ました。
下写真は2024年6月26日撮影
枇杷クイーン長崎の種子から発芽した写真2024/06/26撮影
親のクイーン長崎より良い実が成るか楽しみですが、実が成るまで10年ぐらいは掛かりますから水遣り植え替えが必要な鉢栽培では気が遠くなる歳月の長さです。

枇杷の葉が周囲から茶色に変色

ところで、購入した時の黒いビニールポットから鉢に植え替えたときに枇杷の葉が周囲から茶色になって最後には葉が落ちてしまいました。
周囲から茶色に変色した枇杷の葉
枇杷は乾燥に強いと言いますが、植え替え時には根の発育が遅いらしくて水を切らさなくても葉が枯れるので、葉を幾らか落としてから植え替えするなど慎重にする必要があるようです。