イチョウについての覚書

イチョウの原型と思われる植物が確認できるのは、石炭紀以前(約3億数千万年前)に遡ります。
と言ってもこの頃のイチョウと思われる植物は、葉かどうか不明な部分が扇形で深い切れ込みがあるだけで、他の葉化石と比べてイチョウの前駆植物だろうと推測させるだけです。
時が経って中生代(約2億5千年前)になると、雌の、子孫を殖やす器官である「胚珠」が露出している裸子植物が繁茂します。
特に中生代ジュラ紀(約2億千万年前~約1億4千万年前)が裸子植物全盛時代で、南極と赤道付近を除いて茂っていました。
イチョウも裸子植物ですから繁茂した中に入りますが、私たちが見るイチョウとは形が異なっていました。

アンモナイトで有名な白亜紀(約1億4千万年前)晩期になると、被子植物には運悪く、激しい地殻変動や気候変動が起こり、気候変動に弱い裸子植物は衰退の一途を辿りました。
代わりに、子房を作りその内部に胚珠を入れた被子植物が繁茂し出します。
子孫を殖やす器官である胚珠を内部で保護することによって気候変動などに強かった訳です。

第三期氷河期によって、イチョウは中国の三地域を除いて絶滅しました。
日本では紀元前の弥生時代の遺跡から銀杏が出土していますが、自生していたかはっきりしません。
その後、中国のイチョウは自生地が仏教寺院の開基された場所ということもあって仏教徒の保護を受け、中国各地や日本に伝わりました。
寺院や神社にイチョウの古木がある理由のひとつです。

ところで、イチョウの実(銀杏)は臭いですが、自然界では、落ちた銀杏はリスや狸などの小動物によって食べられ、 臭くなる部分(外種皮)だけを食べる動物によって種子は遠方に運ばれて発芽します。

イチョウはご存知のように雌雄異株なので実を取るために植栽するには苗木の内に雌雄の判別をすることが重要になります。
判別には性によって異なる酵素を分離する方法など化学的なものが確実ですが、外観から判別する方法があります。
  • 雌木は雄木に比べて矮小
  • 幹や枝は雌木の方が逞しい
  • 横に張る枝は雌木の方が多い
  • 雌木は発芽が遅い
  • 雌木は落葉が早い
  • 雌木の葉は小型で切れ込みが浅い
  • 雌木の葉柄の維管束の周囲には脂隙があるが、雄木には無い
  • 雌木の主枝は横から下方に伸びるが、雄木の主枝は上方に伸びる
など