身近な自然と科学

双眼鏡の接眼レンズを天体望遠鏡に転用

壊した双眼鏡は、否、接眼レンズを外した双眼鏡は量販店のワゴンセールで800円で売られていたものです。
ルビーコート(レッドコーティング)がしてあるらしく対物レンズが赤っぽく見えて値段の割には良さそうに見えます。
(実は、これが曲者で、視界が水色っぽく見えてしまいます)
その上、視野の周辺で特に像が歪む歪曲収差と、中央部と周辺部でピント(合焦)位置が異なる湾曲収差が強い双眼鏡です。
それでも裸眼視力が悪いと、こんな物でも役に立ちます(笑)
しかし、外装のラバーが切れて使いかってが悪くなってしまったので部品を取るために分解しました。
修理するような品でないというらしく、プラスチックと接着剤が多用されていて綺麗に分解できませんでした。
下の左写真の左から対物レン ズ(口径25mm焦点距離100mm)、鏡筒、ダハプリズム、接眼レンズ(焦点距離10mm)

双眼鏡から対物レンズと正立プリズムと接眼レンズを外した写真 天体望遠鏡に双眼鏡の接眼レンズを付けたところの写真

ダハプリズムは、凸レンズ系の対物レンズと凸レンズ系の接眼レンズを使ったケプラー式望遠鏡では像が反転して地上の風景が逆さまに見えてしまうので、プリズム内での光の全反射を何度か使って像を反転し、風景が正立して見えるようにするものです。
昔からの、如何にも双眼鏡らしい形の物には、光を90度曲げる直角プリズムを2個組み合わせたポロプリズム系と呼ばれるものが使われています。
ポロプリズム系に使うプリズムは作るのがダハプリズム系より容易で、また、左右の対物レンズの間隔を広げたい双眼鏡には都合が良いので昔から使われています。
(左右の対物レンズの距離を広げると、像の立体感が増します)

さて、対物レンズは、色付きな上にF(焦点距離÷口径)が4なので像の歪みが酷く今のところ使い道がありません。 
そこで、接眼レンズを天体望遠鏡に付けてみました。(上の右写真)
双眼鏡用の接眼レンズは視野が広いので、天体観測用に転用する方たちがいらっしゃいます。
 同じ双眼鏡の転用と言ってもまともに見えない安物双眼鏡では?と思いながら、木星に望遠鏡の筒先を向けてみると、意外意外と言うほどよく見えました。
Or.(オルソスコピック)ほど綺麗には見えず、周辺部に収差はありますが、ハイゲン式より視野が広く、ビクセンのFL-90Sでは色収差もハイゲンより目立ちません。 
ラムデン式(平凸レンズ2枚を凸の方を向かい合わせたもの)の眼に近い方を色消しレンズにしたケルナー式かも知れません。
ケンコーのコスモウィング(115mm反射赤道儀、三脚が木製なので相当古いらしい)では倍率が高くなるせいか色収差が強く出ます。
それでもハイゲンよりよく見えました。
800円の双眼鏡を壊してハイゲンより良いアイピースが2個作れるなら安いかも。
こんな双眼鏡の接眼レンズでもけっこう見えるのですから、少しまともな双眼鏡の接眼レンズでは?と興味がわいてきました。