身近な自然と科学

月を写真に撮る

2024年8月17日更新

月は天体写真では入門対象です。
太陽は明るすぎてカメラを壊したり、或いは減光フィルターなどが必要です。
木星や金星などは適度な明るさがありますが、一般に使われているカメラだけでは点状に写るだけです。
星野(星座)は暗すぎ、長時間露光すると日周運動のために円弧の一部と して写ってしまいます。
その点、月は若干小さいですが、地上の風景並の明るさがあり、コンパクトデジタルカメラやムービーカメラでも光学10倍ぐらいの望遠端で月と判る程度には簡単に撮ることが出来ます。
下写真は、デジタル一眼レフに望遠レンズを装着し、カメラ用三脚に固定、セルフタイマーで撮ったものです。
 2011年10月29日17時48分
 ニコンD40+コシナ 100-300mm F5.6-6.7
 ISO感度400 露光時間8分の1秒
ニコンD40+コシナ 100-300mm F5.6-6.7で撮った月の写真
ギリシャ神話に登場する「女神アルテミスの銀の弓」には、二日ばかり過ぎてしまった太い銀の弓です。
因みに、銀というのは月のことです。
高度が低い上に薄雲が掛かっていたのでオレンジっぽさが強いです。
月のクレーターまではっきり写したいというときには望遠鏡が必要です。
バードウオッチングなどに使われるフィールドスコープでも撮れますが、天体という撮影対象では輝点と闇がはっきりしているので色収差(色滲み)が目立ちます。
天体に限らず鳥などの写真撮影にも使いたいときには、レンズに低分散ガラス(EDガラス)を使用して色収差を抑えてあるものがベストです。
天体望遠鏡もEDガラスを使ったものがベストなのは言うまでもありませんが、高価です。

天体望遠鏡が手に入ったら撮影方法を考えます

レンズ交換が出来る一眼レフやミラーレスカメラの場合には、光を電気に変換する撮像素子上に望遠鏡の対物レンズで作った像を映して直接撮ることが出来ます。
これを直焦点撮影と読んでいます。
要するに、望遠鏡の対物レンズがカメラのレンズの代わりになっただけです。
直焦点撮影をする場合には、カメラのレンズを接続する部分(マウント)と望遠鏡に接続する部分の両方を持った「Tリング」が必要です。
左の写真は、天体望遠鏡の直焦点で撮ったものです。
 使用天体望遠鏡:ビクセンFL-90S
 カメラ:ニコンD40
 ISO感度400
 露光時間320分の1秒
 撮影日時:2012年10月31日21時22分
ビクセンFL-90Sの直焦点で撮った月の写真
直焦点の場合、太陽や月の像は対物レンズの焦点距離の100分の1或いは110分の1の大きさになると言われています。
FL-90Sの焦点距離は810mmなので、約8mmになります。
もっと大きい像が欲しい場合には、望遠鏡の接眼レンズでカメラの撮像素子上に像を投影する拡大撮影法が使われます。
望遠鏡で普通に天体を観るようにセットし、レンズを外した一眼レフやミラーレスカメラのレンズをはめる部分を接眼レンズに平行に向けます。
このとき、カメラは三脚に固定し、カメラ内部に周囲から光が入らないように覆いを掛けます。
原理的にはこれで撮れますが、拡大撮影法では像が大きくなる分、像が暗くなるので露光時間が非常に長くなり、その間に天体が動いてしまうので像がボケてしまいます。
そこで、望遠鏡とカメラを接続して 一体化する、拡大撮影用のアダプターが市販されています。
フィールドスコープ+レンズ交換が出来る一眼カメラで撮影する場合にはフィールドスコープのメーカーや形式によって接続器具が異なる場合がありますので要注意です。
どんなカメラでも天体が撮れる方法にコリメート法と呼ばれるものがあります。
これは、眼が接眼レンズを覗く代わりにカメラに覗かせるものです。
簡単な方法と言われていますが、実際は非常に難しいで す。
望遠鏡とコンパクトデジタルカメラを接続する器具 があります。
これは望遠鏡の接眼レンズを付ける筒(ドローチューブ)を挟んでカメラを固定するものです。
ドローチューブを挟んで固定するので、ドローチューブや接眼レンズがどんな型でも使えますが、カメラの重さがドローチューブに掛かるので、或る程度頑丈な望遠鏡で無いと使えません。

コリメート法

このような器具を使わない方法では、先ず、望遠鏡を月に向けてピントを合わせます。
次に、左写真のようにカメラのレンズを接眼レンズに接近させて三脚で固定します。
コリメート法で天体写真を撮るときの接続方法を示した写真
このとき、カメラのオートフォーカスを切ってマニュアルフォーカスにして遠方に焦点を合わせるか、遠景撮影モードにします。
そして、カメラのレンズに周囲の光が入らないように暗くするか覆いを掛け、カメラの液晶画面に映った月の像がはっきり見えるように望遠鏡側でピント合わせをします。
露光は中央スポット測光ならオートでよいかも知れませんが、マニュアルなら15分の1秒ぐらいで試し撮りして加減します。
直ぐに撮影画像が見られるのが、天体写真にデジタルカメラを使う利点の一つです。
シャッターを切るときはカメラや望遠鏡が動かさないためにリモコンかセルフタイマーを使います。

⇒ 高倍率デジタルカメラNikon P610で天体を撮ってみた

コリメート法や拡大撮影法は天体望遠鏡で無くても、双眼鏡の片側だけでも当然出来ます。
コリメート法の 焦点距離は、カメラのレンズの焦点距離×望遠鏡の倍率 になります。
F値(焦点距離÷レンズの有効口径)は大きくなるので、露光時間は非常に長くなり、また、像を結ぶ光が多くのレンズを通過するために他の方法に比べてはっきりした写真にはなりません。