身近な自然と科学

スカイドリーム GX4000 天体望遠鏡

買ってはいけない望遠鏡を買ってしまいました。
その望遠鏡とは、ケンコーの反射赤道儀「スカイドリーム GX4000」
ケンコーの反射赤道儀「スカイドリーム GX4000」 の概観の写真
もちろん、現行機種では無く、中古でしか出回っていない昔のものです。

この機種の特徴は、主鏡の口径が114mmなのに焦点距離が500mmと短く、赤道儀の架台と三脚が貧弱なことです。
使い物にならない望遠鏡と知りつつ買ったのは、主鏡が使えるかも知れないと思ったからです。
機械磨きですからガラスの質が多少落ちる程度で、この程度の口径なら普通の望遠鏡の鏡と比較して私の近眼乱視の目なら区別が付かないのでは無いか? という淡い期待です
(主鏡は厚さ14mmの青ガラス、斜鏡の短径は24mmでした)
昼間、遠くの木立に望遠鏡 を向けてみると、比較的よく見えるのは視野の中心部分だけで、その周囲は球面収差で像が乱れています。 それも、中心部だけでも見えるのは付属のハイゲン式接眼鏡20mmだけ、付属のハイゲン10mm スペシャルラムデン5mmは役に立ちません。 見かけの焦点距離を伸ばして倍率を上げるバローレンズも付属していましたが、もちろん、使える代物ではありません
そもそも、ハイゲン式やラムデン式の接眼レンズは、F(焦点距離÷有効口径)が10以上の屈折望遠鏡用で、Fが小さくなりがちな反射望遠鏡には使えません。
ここまでは、ほぼ予想通り、(普及品ですが)オルソスコピック(Or)接眼レンズにしてみると、中心部はより綺麗に見、風景を見るには差し支えないぐらいになりました。

次の点検は架台の赤道儀です
華奢な構造の所為か、中古なので経年劣化なのか判りませんが、赤緯軸、赤経軸ともにクランプを締めても一度では止まりません。
その上、鏡筒を架台に取り付ける位置が悪くて赤緯軸で鏡筒がバランスしません。更に、ドイツ式赤道儀に不可欠なバランスウェィト(鏡筒の重さと釣り合わす錘)が軽すぎます

全天、薄い雲が掛かっていましたが、金星が輝いていたので望遠鏡を向けてみました。
が、中心に金星を入れても点どころか円にならずに尾を引いています。光軸が狂っているようです。
薄っぺらな取り扱い説明書には光軸合わせについて書かれておらず、斜鏡(主鏡で集めた光を接眼レンズに光を入れる平面鏡)の調整ネジにはカバーが掛かっているようです。
ケンコーの反射赤道儀「スカイドリーム GX4000」 の主鏡を覗いている写真
初心者には弄ってもらいたくない気持ちは解りますが、 接眼部のドロチューブは、天体にピントを合わせたときには鏡筒内部に入り込みます。3倍のバローレンズを使うときにはドロチューブの繰り出し量が多くなりますが、それでも長すぎます。(バローレンズは使わないのでドロチューブを30mmほど短くしました)

翌日の夜、西の空に、月、木星、金星が見えたので、この「スカイドリーム GX4000」と、日本製とだけ表示されているだけのメーカー不明の口径80mm焦点距離700mm屈折で見比べてみました。
GX4000は、前日主鏡と斜鏡を清掃して付け直したからか、光軸が購入時より合っていましたが、何に向けても80mm屈折に完敗しました。 80mm屈折ではかろうじて見えた木星の縞や欠けた金星が、GX4000では見えません。見える恒星の数も80mm屈折の方が多いようです
主鏡が球面の上に口径比Fが大きいのですから綺麗に見える範囲が狭いのは承知ですが、口径114mmと謳いながら見える恒星数でも無名の口径80mm屈折に負けるとは・・・
斜鏡の大きさが小さすぎるので、適正な大きさに変えたら少しは良くなるのでしょうか... 斜鏡を大きくすると主鏡の周辺部の光まで取り込むので球面収差が目立って使い物にならないでしょうか。