身近な自然と科学

進化論・ラマルク説

ラマルク説は、ダーウィンの進化論の前に提唱されていた進化論です。
説の名前は知らなくても、聞いたことがある論だと思います。
ラマルク(Jean Baptiste de Monet Lamarck 1744-1829)は、フランスの博物学者です。
彼の説は、『動物哲学(1809)』にあらわされていますが、個人的にはすごく解りやすいと思います。

この説の要点は
  1. 生物は小さい物から大きな物へ
    単純な物から複雑な物へ進化する性質を必然的に持っている。
  2. 環境条件によって得た性質は遺伝する。
    用不要説です。

1については、自然に湧いてくる思想(感情)だと思います。
何か作った時などには、大きくて複雑な方が立派に見えるのでは?とか、機能盛りだくさんのパソコンが欲しいとか 、と思うでしょう。
意識として持っているものは無意識に持っていても不思議はないです。

2については、 例えば、キリンの首は高い木の葉が食べられるように長くなって、代々受け継がれて長く長く進化したといった類です。
このような説明は、小さいお子さんに象の鼻などで質問された時に「手の代わり、とか、良く水が飲めるように」とか答えがちだと思います。
このように一見子供だましのような説で現在では否定されていますが、潜在的には支持者の多い立派な説なのです。

発表当時もラマルク説は認められませんでした。
ラマルク説は実証が乏しく、頭で考えた説だったからです。
この時代のフランスは宗教の力が衰退しかかり、実際にある物を根拠(この場合は化石)に理論を組み立てる風潮が強かったので、著名だった“化石学者キャヴェエ”に敗北したのです。
キャヴェエは、「生物の種は不変で、生命の歴史は天変地異と創造による」と説き、ラマルク説は出きあがっている化石による生命観に混乱を与えると非難しました。
それから50年後、ダーウィンの進化論が出るのですが、この論争はダーウィンの祖父(エラスマス・ダーウィン)影響を与え、ダーウィンは20年間かけて彼の進化論の実証を積んだのです。

ところで、ラマルク説が現代でも潜在的に支持されている理由ですが、ダーウィンの自然淘汰説では、 遺伝子の突然変異に始まり自然淘汰までに“生命としての意志”がありません。
宗教的な神様を否定することは当然なのですが、進化するには何らかの力が必要だと思われているのです。
ダーウィンもなぜ変異するのか悩み、ラマルク説を容認しています。

現在、問題化している“抗生剤に抵抗力がある菌”ですが、徐々に抗生剤の効かない菌に変異したのならラマルク説に合うのですが、 元々、抗生剤に抵抗力のある変異種が含まれていて、抵抗力が無い菌が死滅して入れ替わっただけということです。