アケビの人工授粉
昨年2016年の正月明け、 ホームセンターで売れ残って安くなっていたアケビを買ってきました。
アケビは異種の花粉で受粉しないと実が極端に成り難くいものです。梅や、 アケビ同様に野生にあるものならグミと同じです。
家庭果樹では梅の受粉木には小梅、グミの受粉木には西洋グミなどを使い、 アケビの場合は五葉アケビと三葉アケビを使うようです。
この先人の例に倣えば、五葉アケビと三葉アケビを買うべきなのですが、 三葉アケビが無かったので、五葉白アケビと五葉紫アケビを買って来ました。
アケビに詳しい方なら五葉同士で実が成るのか知っているのでしょうが、何事も自らの体験と意気込みました。
ところが、購入した年の春は五葉白アケビが五葉紫アケビよりひと月近く早く咲き出し、 紫アケビと花粉交換が出来ないまま終わってしまいました。 媒介昆虫が居ない環境だったので自家受粉をしてみたのですが、実りはありませんでした。
で、今年2017年の春、やはり白アケビの方が早く咲き出し、今年も駄目かと嘆いていたところ、 彼岸中の暖かさの影響が紫アケビも3,4つ咲いてくれました。
アケビの花には、花粉を出す雄花と花粉を取り入れて実を成らす雌花がありますが、 雄花数50に対して雌花数1ぐらいの割合で、雌花が非常に少ないです。
アケビの実はアケビの蔓の太さから比べて大きいのでたくさんの実を付けられないので雌花は少なく、 アケビの花は花粉を媒介する昆虫が少ない早春に咲くので昆虫に花粉を付けるための雄花が多いということなのでしょうか
そして、食べるところが無いくらい種が多いのは、 子孫を増やす種が多くなければ生き残れないほど生存競争が厳しいということ?
左:五葉白アケビ 右:五葉紫アケビ
撮影日2017/03/19
五葉白アケビの雄花
撮影日2017/03/19
五葉白アケビの雌花
撮影日2017/03/26
五葉紫アケビの雄花
撮影日2017/03/19
五葉紫アケビの雌花 撮影日2017/04/04
生物は生き延びるために今の形態になった、 或いは、偶然に生まれた今の形態を持った生物だけが生き残った、とか言われています。
例えば、他の動物が食べられない木の頂上部の葉を食べるためにキリンは背が高くなり首も長くなったとか、 木の頂上部だけを食べられた大きなキリンだけが生き残って繁殖を続けたとか
アケビや梅、グミなどのように異種の花粉が必要なのは何ででしょう?
別の遺伝子を入れて環境変化に対応して生き残れるように、でしょうか。 しかし、自家受粉や根などで増える植物だって謳歌しています。
パンダやコアラは、笹やユーカリでも好みがあります。 こんな偏食をしていたら真っ先に飢え死にしてしまいます。
生物が今の形態になった理由は、結局は人間の小利口さが生んだ後付けのような気がします。
くだらない屁理屈は横に置いて、アケビの花から放たれた甘い香りの中で、 五葉白アケビの花粉を五葉紫アケビの雌しべに、五葉紫アケビの花粉を五葉白アケビの雌しべに付ける人工受粉をしてみました。
それから1月ばかり経って
五葉白アケビの成長の早いもの
撮影日2017/04/22
五葉紫アケビ
撮影日2017/04/21
白アケビの熟果の表皮の色は白っぽいですが、膨らみ始めた子房の内から白っぽくなるの様です。
五葉白アケビと五葉紫アケビの相互受粉が成功したと思っていたのですが、紫アケビの方はいつの間にか実が無くなっていました。
白アケビの花粉に能力が無いのかも知れません。私が栽培している白アケビだけかも知れないので、次は実生から大きくした白い花のアケビで試してみようかと思っています。
下写真は、紫アケビの花粉で受粉した白アケビの成長中の実 2017年5月14日撮影
下写真は、実生から大きくした露地植えの白い花が咲いたアケビに紫アケビの花粉を受粉させて成長中の実
2017年5月14日撮影
アケビは種を適当に水洗いして直ぐに蒔いて土をかぶせて置けば来春にはたくさん芽生えます。芽生えた後は日当たりが良い所で水枯れしないようにしていれば数年で花が咲き出します。この白アケビらしいアケビも道の駅で購入した実から芽生えたものです。
実や人工授粉には関係ない話ですが、アケビの新芽にはアブラムシがたくさん寄って来ます。春の新芽は山菜として食べられますが、 アブラムシが付いているのを見てしまうと食べる気が湧きません
2017年6月5日撮影
自然落下なのか、幼果が幾つも落ちていました。
鉢植えのアケビは夏季には日陰に移したのですが一度水切れをさせてしまったのが悪かったのか落ちてしまいました。購入時のままの6号鉢ではずぼらな私には無理でした。
実生から路地植えにした五葉アケビに紫五葉アケビの花粉を受粉したものは実がさけました。バナナの大房を何個も買ったようにたくさん収穫できました。
ねっとりして甘いですが、種が多すぎです。アケビはちょっと口に含んで季節を味わうものですね。
アケビの路地植えは水枯れの心配も無く、受粉だけ気を遣えば、柿などのようにご近所迷惑になるような毛虫の大群に襲われることも無く楽に実を楽しめます。
2019年7月19日撮影 今春、三つ葉アケビで受粉した路地植えの五葉白アケビの実です。
三つ葉アケビは数十年前に購入して敷地の隅に植えた記憶があるのが、隣敷地が空き地になって日当たり良くなったから突然姿を現したものです。 五葉白アケビの花粉を三つ葉アケビの雌花に付けたものは実が成りませんでした。