身近な自然と科学

幸福の竹

過日、100円ショップで『幸福の竹』という小さな鉢物を買ってきました。
園芸店では『ミラクル・バンブー』という名で、“電磁波を防ぐといわれているので、 テレビやパソコンの傍に”とコピーが張ってありました。
「1本や2本の植物で電磁波を防げるなら、白い綿布で防げると主張する某集団の勝ち!
(雨で濡れると効果的、お塩を振り掛けると伝導性が増し効果倍増)」と笑いましたが、驚いたのは水の入ったコップに挿してあるこの植物の茎から根が出ていることです。
浅学の私は、竹は挿し木が出来ないと思い込んでいましたから、この植物は本当に『竹』なのか疑いました。

Web検索して1件出てきたのは、『ミラクル・バンブー(まんねんたけ)』。
万年竹・・・・竹細工の本で見たような名ですがイメージが合いません。
そこで、図書館に駆け込んで調べてみると、 「竹の挿し木苗は作れる、特に熱帯産バンブーは容易」
しかし、 『バンブー(bamboo)』は竹ではなくあくまで『バンブー』とのこと。

分類学的に竹は、タケ科或いはイネ科タケ亜科に属します。
どっちに属するのか? 奇妙な植物が竹です。
タケ科とした場合は“樹木”としての性質を、イネ科タケ亜科とした場合は“草”としての性質を強く捉えているようです。
では、樹と草の違いは何か?
1年中地上部が枯れず、木質化するのが樹木です。
全体或いは地上部が枯れる時期があり、成長が早いのが草です。
竹の場合は、1年中地上部は枯れませんが、見る見る内に伸びると言われる生長の速さは樹木には無いものです。

バンブーは竹ではないと言っても現実に広義で『竹』と言った場合は、“ 竹 ”、“ 笹 ”の他に“バンブー”も含まれます。
竹と笹は近縁です。
この両者の違いは、生長後も幹に皮が付いているのが笹で、皮がとれるのが竹というぐらいですが、バンブー(bamboo)は、竹や笹とは大きく違います。

バンブーの特徴を列挙すると、
  • 地下茎が無い
  • ススキの様に密生する
  • 幹に肉が厚く、幹の中空が小さい
  • 葉は平行脈で、殆ど無毛
  • 染色体が72個(竹や笹は48個)

バンブー(bamboo)は馴染みが薄いと思いますが、隣国の中国・台湾、国内では沖縄や西日本の暖地に自生するので昔からおもしろい用途があります。
1542年種子島にポルトガル人が漂着して鉄砲を伝わりましたが、火縄銃の火薬に引火させる火縄には“蓬莱竹(ホウライチク)”と呼ばれるバンブーの幹を砕いて縄にしたものが使われました。
火を消え難くする日本人の改良です。
また、お正月の松竹梅と一緒に飾ることがある“蓬莱飾り”にも蓬莱竹が使われます。
ちなみに蓬莱とは台湾のことです。
もっと身近なバンブーはラーメンに入れるメンマの原料が“麻竹(マチク)”といわれるバンブーの筍です。