梔子
滅多に行かない小さな公園の垣根にオレンジ色のものがたくさん付いているのを見かけました。
この公園の垣根は、クチナシ(アカネ科)です。
初夏の頃、数メートル離れても白い六弁花からは芳香が漂ってきます。
実際にクチナシという植物を知らなくてもこの甘い匂いだけでクチナシと判るほどで、また、この匂いが何であるかを知る為に植物図鑑を開く気さえ起こすほど甘美なものです。
特に八重の花は匂いが強いです。
花も一重咲きのものは特徴的な六弁ですが、花や匂い同様、実も特徴的な形をしています。
この実については、お料理に関心のある方は、クチナシは金団(きんとん)や和菓子の染料としてご存知だと思います。
梔子飯(炊くときにクチナシの実を入れて染める)もあります。
この色素はカロチノイド系です。
薬草や漢方に興味がある方は、この実を陽に当てて乾かした生薬、“山梔子(さんしし)”としてご存知かも知れません。
消炎、利尿、止血、鎮静、血圧降下作用があるようです。
腰痛には、山梔子5~10グラムをコップ3杯の水で煎じ、1日に3回に分けて飲むと良いようです。
ということ、食品の染料に使う場合も濃くすると上記の様な症状に効くのでしょうけれど、健常人に利尿作用は困りますね。
食品の染料、薬用に使え、花、匂いも良しとなれば庭に植えようと思う方もいらっしゃると思います。
私も数年前に匂いに惹かれて梅雨期の挿し木に挑戦したことがあります。
ところが、土から用意しなければならない住宅事情で、切った枝をコップに挿したまま忘れてしまったのです。
また、ところがです。
切り口から根が出てきました。
このときのクチナシは植木鉢に植えられて、今、戸外で寒さに震えています。
このように殖やすのは簡単なのですが、用途によって品種を選ばなければなりません。
派手な花と匂いを好む場合は、八重咲きの園芸種です。
八重咲きは実が成りません。
以前、当メルマガでも話題にしましたが、八重咲き品種は、おしべが花びらに変わったものなので生殖能力が低いのです。
染色用の実を採るには大型の実が成る、“水梔子”を選びます。
ただし、水梔子の実は“水梔子”と呼ばれ薬効が低いといわれています。
さて、クチナシの語源ですが、クチナシの実は地面に落ちても割れず、中に入っている小さな種も出る事はありません。
それで、種が出る“口が無い”からクチナシになった、というのが一般的な説のようで、また、実の漢名を“梔子”というのは、 “梔”というのはお酒を入れる器のことで、実の形がその器に似ているからで、碁盤の脚の形はクチナシの実の形から来ているそうです。
梔子の花言葉は『私は最高に幸福』