身近な自然と科学

核分裂と核融合 原子力発電所は何のエネルギーを電気に変えているか

原子力発電所というのですから、原子力を電気に変えているわけですが、もう少し詳しく説明します。
原子は原子核と電子が作っている電子雲からなっています。
そして、原子核はプラス電気を帯びている陽子と、電気的に中性の中性子から出来ています。
原子核に含まれている陽子の数は原子によって異なり、陽子の数が同じで中性子の数が違うものを同位体と呼びます。
このように、原子核は幾つかの核子(陽子と中性子)が一塊になっているもので、原子核には核子をまとめているエネルギーが存在します。
そして、このエネルギーは原子の質量数(陽子の数+中性子の数)によって増減し、質量数が小さいときは大きなエネルギーを持ち、 質量数が60付近(鉄)が最もエネルギーが少なく、より質量数が増えるとエネルギーが大きくなっています。
原子の質量数と原子核が持っているエネルギーの関係図
そこで、質量数が小さい原子は質量数を増やせばエネルギーが余り、質量数が大きい原子は質量数を減らせばエネルギーが余ることになります。
このように、原子の質量数を変化させて余ったエネルギーを電気に変えるのが原子力発電です。

核分裂と核融合

質量数の小さい原子核をくっつけて質量数の大きい原子核を作ることを「 核融合 」と言い、 逆に大きな質量数の原子核を分けて質量数の小さな原子核を作ることを「 核分裂 」と言います。
原子核の核融合と核分裂の説明図
現在、実用化されている原子力発電は、ウラン235を質量数96と140を中心とする2個の原子核に分裂させ、この時に解放される運動エネルギー(200MeV)を利用しています。
核融合では、重水素を融合させてヘリウムを作る場合には、発熱反応で3.27MeVのエネルギーが得られます。 1反応当たりのエネルギーは核分裂よりはるかに少ないですが、水素は質量が小さいので質量当たりのエネルギーは核分裂よりはるかに大きくなります。
重水素は海水中に0.015%程度含まれているので海に囲まれた我が国では重水素は無尽蔵に得られ、 何十万年も高レベルの放射性を出し続ける廃棄物は出ない、核分裂とは異なって連鎖反応では無いので暴走事故は起きないので核融合は夢の原子力発電と言われています。
問題は、核融合を制御して継続的に利用するために絶対温度で1億度という高温プラズマの磁場を必要とし、長期間に渡って高温に耐える材料が必要等で実用化に至っていません