小麦粉生地を膨らませる酵母菌と重曹の違い
パンや菓子を作るときに 酵母菌(イースト) や 重曹(炭酸水素ナトリウム) を使いますが、どちらも二酸化炭素で小麦粉で作った生地を膨らませることに変わりはありません。
酵母菌の働きをパンの作り方から考える
- ぬるま湯の砂糖水を作り、この中にイースト(酵母菌)を入れてよく攪拌し、15分間程度放置しておきます。
これは、酵母菌に含まれているチマーゼと呼ばれる酵素群によって砂糖がブドウ糖に変わるの促進させる効果があります。
小麦粉、砂糖、イースト、水を同時に入れてしまうより、砂糖水の中に酵母菌を入れた方が早くブドウ糖に変わります。
このまま気温30度ぐらいの所に放置して置けば、二酸化炭素の泡が観察でき、観察の副産物として酒が出来ます。
チマーゼ は糖類からアルコールと二酸化炭素を作り出す酵素の総称で、 生化学者ブフナ(ドイツ)が1897年が名づけました - 次にイーストを入れた砂糖水に強力粉の小麦粉を入れてよくねります。
強力粉を使うのは、強力粉は植物性のタンパク質の一種である グルテンが多いからで、グルテンはパン生地を粘らせます。
しかし、グルテンの多い小麦粉をねっただけでは腰のある「うどん」状態なので、湿り気のある温かい所に放置しておきます。
パン作りで言う「一次醗酵」です。
一次醗酵中には、チマーゼが砂糖をブドウ糖に変える他、小麦粉中に含まれている タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)でグルテンの一部が分解されます。
このために、グルテンの粘りが適度に弱まってパン生地が延びやすくなり、グルテンの膜が出来ます。
そして、チマーゼ、タンパク質分解酵素、デンプン分解酵素の働きによって生成されたガスが、柔らかくなったパン生地を膨らませます。
ですから、この段階でパン生地が2,3倍に膨れ上がっていれば、各種酵素が役目を果たした証になります - 膨れ上がったパン生地を潰して生地からガスを抜きます。
せっかく膨れ上がったのを潰すのは勿体無い気がしますが、このまま焼いてはガスが残って風味が良くないのでしょう - 潰したパン生地を好みの大きさ、形に分けて、湿り気のある温かい所に放置します。二次醗酵です。
この段階で酵母菌が大活躍します。
酵母菌は自分の活動エネルギーを得る過程の中で、ブドウ糖から二酸化炭素とアルコール、 その他の微量成分を作り出し、これらのものがグルテン膜によって生地中に閉じ込められるので生地が膨れます - オーブンで焼き始めると、酵母菌は死んでしまいますが、生地内部に閉じ込められていた二酸化炭素が膨張して生地を更に膨れ上がらせます。
生地の温度が70度を超えると、グルテンの膜に穴が開いて二酸化炭素が漏れ出るので生地の膨張は止まります
重曹(炭酸水素ナトリウム)で膨らませる
重曹の場合は、醗酵という手順がありません。
水溶液になっている炭酸水素ナトリウムは、65度以上の温度になると、炭酸ナトリウム、二酸化炭素、水に分解するので、 加熱中に生成された二酸化炭素が熱によって更に膨張して生地を膨らませます。
イーストを使うより簡便ですが、炭酸ナトリウムが残るので、出来上がったものが黄色くなったり、苦味を感じたりします。
重曹を使った「田舎まんじゅう」と言われるものは、黄色や苦味が特徴です。
しかし、色や苦味が不都合なときは、重曹に、酒石酸水素カリウム、酒石酸、第一燐酸カルシウム、焼きミョウバンなどを混ぜたベーキングパウダー を使います。
ベーキングパウダーは、残った炭酸ナトリウムを酒石酸で中和し、その他の成分で生地の黄変を防ぐ工夫がしてあります。