身近な自然と科学

接着剤のしくみ

このページの内容
  • 機械的方法による接着
    • 面ファスナーの方法
  • 原子や分子が他の原子や分子に付く力を利用した接着
    • 接着条件は表面自由エネルギーが大きいこと
    • 表面自由エネルギーが小さいのがフロン

機械的方法による接着

最も理解しやすいのが、物と物を引っ掛ける方法です。
マジックテープとか面ファスナーと呼ばれているものをイメージすると理解しやすいです。
(「マジックテープ」は(株)クラレの面ファスナーの登録商標です)
マジックテープは、下写真の様に、一方の面に鉤状の繊維、もう一方の面にループ状の繊維が植え込んであって、 双方の面を合わせるとループ状の繊維の中に鉤状の繊維が引っかかって取れなくなります。
写真では上がループ状の繊維、下が鈎状の繊維です。
面ファスナーの拡大写真
接着剤を使う場面では鈎とループのように明らかな結合構造ありませんが、 接着する物の接着面が下模式図の様に凸凹していればその間に硬化する接着剤を入れれば硬化した接着剤が鈎とループになって面ファスナーに似た接着方法になります。
機械的作用の接着剤の説明図
接着面に凹凸が無ければ付かない接着剤です。

原子や分子が他の原子や分子に付く力を利用した接着

次は、着ける物を構成している 分子や原子と親しい分子や原子で作られたもの(接着剤)で、着ける物の仲立ちをするものです。
「友達の友達は友達」という話で、分子や原子の間に働く吸引力によって着けます。
分子や原子の間に働く力で最も大きいのは正負の電荷によるもの です。
瞬間接着剤やエポキシ系接着剤など、多くの接着剤がこの方法によっています。
瞬間接着剤は空気中の水で、エポキシ系接着剤は二つの物質を混合したときに高分子になって固まります。
接着する物に含まれる原子や分子との吸引力を大きくするように接着剤に含まれる原子や分子を選びます。
このために、接着剤には良く着くものと着かないものが出てきます。
着ける物に適した条件は「表面自由エネルギー」が大きいことです。
「表面自由エネルギー」というのは、外部に露出している面にある原子や分子が他の分子や原子に着こうとするエネルギーです。
この事がよく解るのはテフロン加工がしてあるフライパンです。
水滴を垂らしても他の物に着こうとするエネルギーが小さいので水滴は広がらずに水玉になります。
表面自由エネルギーが小さくなる理由は簡単です。
先に挙げたテフロン加工のフライパンの場合にはフッ素が使われていますが、フッ素は次の理由で表面自由エネルギーが小さいです。
  • フッ素の原子は水素に次いで原子の大きさが小さく他の原子が最も近づける
  • 原子が電子を引き付ける力は元素の中で最も大きい(電気陰性度が大きい)
  • 反応しやすいので直ぐに反応して他を寄せ付けない
フッ素は極端な例ですが、接着剤は着ける物の表面にある分子や原子に好かれなければ用を成さないのです。
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