身近な自然と科学

バナナの皮が黒く変色する理由とバナナの保存法

このページの内容
  • バナナの皮が変色する理由
    • 冷気で細胞が壊れてポリフェノールが作られる
  • バナナの保存法
    • 細胞が壊れないようにする
    • 化学変化を遅くする
  • フェノールについて

バナナの皮が変色する理由

バナナは、栄養価があり、手軽に食べられるので良いのですが、困るのは日持ちがしないことです。
常温ではもちろん、冷蔵庫に入れると常温より早く変色してしまいます。
シュガー・スポットがたくさん出たバナナの写真
皮の所々に黒斑シュガー・スポットが出ると食べ頃だと言われ、シュガースポットが出来るまでバナナをぶら下げておくスタンドも売られています。
バナナの皮が黒くなる理由ですが、バナナも他の植物と同様に収穫後も呼吸をしています。
この際、バナナの場合は周囲の環境変化で皮に含まれる不飽和脂肪酸の量が変化しますが、 熱帯性の植物なので冷気にふれると不飽和脂肪酸が増えて自身の細胞を破壊します。 情緒的に解釈すれば、市販されているバナナには種子はありませんが、バナナの原種には種があり、 熱帯性植物のバナナが冷気に触れると熟成を早めて環境変化に耐えられる種子を遺そうとする自然の摂理なのかも知れません。
自身の細胞を壊す行為が何に起因するのかは判りませんが、皮の細胞内の液胞に閉じ込められているドーパミンなどの フェノールアミン類が細胞内の別の場所にあるポリフェノール・オキシターゼという酵素によって重合されてポリフェノールになり、 皮が変色します(この反応には酸素が必要です)
重合というのは、1種類の分子が2個以上結びついて分子量の大きな新たな分子になることです。

バナナの保存法

ポリフェノール・オキシターゼは切口が変色するリンゴなどにも含まれ、酸によってその働きを抑えることが出来ます。
バナナを長く保存するには、
  • 皮の細胞を壊すような冷気に当てない
  • バナナを吊り下げるスタンドを使って皮に圧力を加えないようにする
  • エチレンガスなどの熟成(老化?)を早めるガスにふれさせない (具体的には、リンゴの様にエチレンガスを放出する果物や熟している果物と一緒に密閉しない)
  • 化学変化は温度が高くなるほど速くなるので高温の場所に置かない、保存温度は13度ぐらいが良いようです
  • ポリフェノールに変化するために必要な酸素を遮断する
などが考えられます。

フェノールについて

バナナの皮を変色させるポリフェノールは、その分子の中に多くのフェノールを含んでいます。 ポリフェノールの接頭辞ポリはギリシャ語に由来する「多い」という意味です
ポリフェノールは多くの植物に含まれ、ポリフェノールを多く含むワインやコーヒーなどは健康面からも愛飲されることがあります。
しかし、ポリフェノールに含まれるフェノール単体では必ずしも好まれるような物質ではありません。
フェノールは、環状に炭素原子6個が二重結合3個と単結合3個で結びつき、炭素原子にそれぞれ水素原子1個が結合したベンゼンの水素原子1個がヒドロキシル基(-OH)と入れ替わったものです(置換反応)。
フェノールアミン類のひとつドーパミンは、もうひとつフェノールの水素原子をヒドロキシル基に置換し、 別の水素原子を窒素原子1個と水素原子2個からなるアミノ基に置換したものです。

フェノールは石炭からつくられたので石炭酸と呼ばれ、昔は消毒に使われましたが毒性が問題になって使われなくなりました。
水素原子をヒドロキシル基とアミノ基に置換すると、不可欠な神経伝達物質ドーパミンになるのですから、不思議な世界です。
ところで、フェノールのようにベンゼン環を持つものは、良い匂いのするものが多いので芳香族と呼びます。 しかし、フェノールには異臭があります。