アルコー濃度が高い酒が舌癌や食道癌発症の原因になる理由のひとつは水素結合
私はアルコール類を一切飲まないので分からないのですが、テレビなどで飲んでいる姿を見ていると、 ウオッカの様にアルコール濃度が高い酒を飲むと口内に焼けるような刺激が走るようですね。
その刺激がたまらないような表情をする方が居るのもアルコール嫌いな私には一向に解りませんが。
この刺激は、アルコールが粘膜に触れるのですからアルコールで皮膚を消毒するときのように気化熱で冷えたための刺激と理解するのは間違いで、 本当に口内粘膜に熱い刺激を与えています。
酒は、基本的には水とアルコール(エタノールやエチルアルコールと呼ばれるアルコール)で出来ています。
エタノールの分子式は、$CH_{3}CH_{2}OH $ です。ここでは、水になじまないエチル基$CH_{3}CH_{2} $ と、水になじむ水酸基$OH$とに分けて考えます。
もしもアルコールがエチル基の部分だけだとすると、エチル基は疎水なので水と分離した酒になってしまいます。 この様に分離した酒ならサラダ油入りのドレッシングを野菜に掛ける前によく振るように飲む前にはよく振って混ぜ合わさなければなりません。
しかし、親水の水酸基$OH$が水$H_{2}O$と水素結合するためにアルコールと水は分離しないでアルコール分が均一な酒になっています。
水素結合というのは、水素原子Hを仲立ちに結合するもので、電気陰性度(電子を引きつける力)の大きい原子の間に水素原子が入ったものです。 水素原子と電気陰性度が大きい原子が接近すると、水素原子はプラスに帯電し、相手の原子のマイナスに帯電することによって結合します。
水素結合は、電子をやり取りすることによって結合するイオン結合とは異なり、結合力はそれほど強くは有りません。
また、水素原子を仲立ちにして結びつくときの方向によって結合力が大きく違います。 結合力は一直線に並んだときが最も強く、90度になると結合しなくなります。
水素結合の身近な例は氷です。氷は水分子が水素結合によって固体になっていますが、外部から熱エネルギーを与えると結合が解けて水になり、水を冷してエネルギーを除くと水素結合して氷になります。
アルコールが口内粘膜や舌に触れると、アルコールが粘膜や舌上にある水と水素結合します。
冷凍庫で氷を作るときは熱エネルギーを奪うことで水分子の動きを抑えて水素結合させます。
舌や口内、食道の粘膜上の水が水素結合するときは水分子の動きが抑えられるので要らなくなったエネルギーを熱として出しますからこの熱が粘膜を刺激します。
これが、アルコール濃度が高い酒が好きな方は、舌癌や食道癌になりやすいと言われる理由のひとつです。