身近な自然と科学

植物栽培に適した肥沃な土とは

このページの内容
  • 肥沃な土地とは
    • 肥沃な土地は鉱物から植物に欠かせない元素が土壌中に移っている
    • ケイ素4面体とアルミニウム8面体のサンドイッチ構造が重要
  • 土の色について

土地には肥沃な所と痩せた所がありますね。
肥沃というのは植物が育つために必要な微量元素が多く含まれている所で、痩せた所はその反対です。
人為的には有機肥料を与えて土地を肥沃にさせますが、自然状態では作物を作り続けると土地は痩せてしまいます。
古代文明が大河のデルタ地帯に栄えたのは、しばしば襲ってくる河の氾濫により、 作物を作り過ぎて痩せてしまった土が押し流されて上流の肥えた土に入れ替わる立地だったというのは周知の通りです。
占星術の本に拠ると、星座の水瓶座には“瓶から溢れ出た水が悪い物を流し去り、新しい物を創り出す”という意味があるらしいですが、 河の氾濫が新しい土地を作るという古代の人たちの思想が出ているような気がします。

肥沃な土地とは

岩石や砂に含まれているケイ素は、酸素原子4個に等距離等角度で囲まれるような形で酸素と結合しています。
ケイ素4面体を1ブロックと考えて下さい。
岩石中では、ケイ素と酸素が結合したブロック同士が、アルミニウムやマグネシウム、カルシウムなどの元素を仲立ちに結合しています。
この仲立ちをしている元素の種類に拠って次に鉱物が出来ます。
鉱物仲立ちしている元素
橄欖石鉄・マグネシウム
輝石カルシウム・鉄・マグネシウム
正長石カリウム・アルミニウム
石英酸素
これらの鉱物が化学的風化作用(水和、加水分解、酸化・還元など)を受けると、仲立ちをしている元素が離れ、土壌中に移ります。
この元素が植物に良い物なら肥沃な土地と言われます。正長石はカリウムを含むので、肥料の原料になるほどです。
重要
岩石が化学的風化作用を受けて作られる粘土鉱物は、ケイ素と酸素の結合した物ケイ素4面体とアルミニウムと酸素が結合した物アルミニウム8面体 が層構造に結合しています。
これらの粘土鉱物は、負の電荷を持っているため、カリウム、ナトリウム、カルシウム、水素などの正の電荷を持つイオンを引き付けます。
植物はこれらの元素(正イオン)を利用する訳ですが、植物は根から酸性物質(水素イオンを含む)を出し、 その水素イオンがカリウムイオンなどと置き換わり、カリウムなどは根から吸収されます。
従って、負の電荷を多く持った粘土鉱物ほど正の電荷を持ったイオンを引き付けるため肥沃な土壌となります。
例えば、園芸用土であるバーミキュライトは下図の様な層構造をしています。
バーミキュライトの層構造のイメージ
ケイ素四面体とアルミニウム八面体のサンドイッチ構造が多いほど負の電荷が多い為、正の電荷である元素を引きつけ、保持するために肥沃な土地となります。

土の色に付いて

土には様々な色があります。赤っぽいもの、黒っぽいもの、・・・・
色は皆さんのご想像通り、成分の偏りによります。
高温多雨な地域では、多量の雨と化学反応が促進される温度があるため、ケイ素で作られた粘土鉱物からケイ素が溶け出し、 ケイ素4面体を結び付けていた鉄が相対的に多く残るようになり、 鉄は酸化されて赤錆色に変わり、土は赤くなります。
赤褐色の土の場合は、60%以上が酸化鉄で、普通の土に70%以上も含まれているケイ素は数パーセントに落ちています。