FC-B47特定小電力トランシーバーの使用感
FIRSTCOM の特定小電力トランシーバー FC-B47 を購入しました。
FC-B47 が同価格帯の他社のトランシーバーと異なる点(メリット)は、電話の様に喋りながらでも相手の声を聞くことが出来る同時通話(複信)が可能なことです。
同時通話が出来る特定小電力トランシーバーは、クレーン操作などに使うための業務用用途が多いためか高価な物が多いのですが、FIRSTCOMだけあって同時通話可能なFC-B47も安価です。
なお、機種名に「47」とありますが、同時通話とベビーモニターモードで中継用チャンネルを使っているだけで、レピーター(中継器)には対応していません。
私には トランシーバーを使いたい遊びや仕事は無いのですが、実験中に電源入力端子に過電圧を加えて壊してしまった、同時通話可能な特定小電力トランシーバー Clarion JQ-20 の相棒になるかと、FC-B47を1台購入してみました。
ところが、FC-B47 と JQ-20 の同時通話可能な周波数に共通なものが一組もありませんでした。(Clarion JQ-20 の取り扱い説明書が見つからないので使用周波数が判りませんでした)
結局、FIRSTCOMにしては高い、ただの20CHトランシーバーを買ったのと変わりありません。
それで、仕方なく、FC-B47 をもう一台購入しました。
同時通話機能には、送受信周波数の組み合わせや制御信号が独自なのがあるので同一機種に揃えるのが無難ということで。
レピーター(中継器)を使う場合にも、レピーターとトランシーバーの組み合わせが重要です。
せっかくなので、FIRSTCOM FC-B47 のレビューというか使用感を書いてみようと思います。
アンテナはスプリングをゴムで覆った構造の様で軟らかく、長さは13cm、特定小電力トランシーバーにしては長いです。
使用周波数帯の4分の1波長が約17cmですから、アンテナは4分の1波長 でしょうか、それとも、ヘリカルアンテナ?
この長いアンテナは折り畳むことは出来ませんし、もちろん、電波法上容易に外せない構造なので使用場所によっては邪魔になるでしょう。
電源は単三乾電池3本か専用充電池、充電池の場合は本体に装着したまま充電できるように、筐体の底部に電極が露出しています。
車載や室内で長時間使う場合には、乾電池との接続端子と外部に露出している電極を電線で繋いで筐体底部から外部電源を供給する方がよいでしょう。
技術適合証明証(技適)は背面のベルトクリップを付ける上に貼ってあります。
常時ベルトクリップを付けて置いた方が証明書が剥がれ難くなってよいです。
電池を入れる部分には、メーカー名とシリアル番号、検査パス証が貼ってあります。
下写真の左右の円部分で電極 が露出している
電源を入れて直ぐにがっかりしたのは受信時の音量です。
ボリュームを上げてもスピーカーから出る音とは思えないほど小さく、しかも、「サー」というノイズがあります。
呼び出し音はうるさいほどの音量になるので、内臓マイクの出力が小さくて変調が浅いらしいのですが、大きな声で話すと音が歪んでしまいます。
変調というのは、音声を電波に載せることです。
このトランシーバーは音声によって電波の周波数を変化させています(FM:Frequency Modulation )
「変調が浅い」というのは、音声の変化に対して周波数の変化の割合が小さいということです。
逆は「変調が深い」と言い、周波数の変化が大きすぎると、過変調と言います。
過変調にすると音が歪みます。
トランシーバーの様に音質に拘らず、相手の言っていることが判ればよいという場合は、受信音が大きくなるように変調を深くするのが一般的です。
次に、百円ショップで売っていたパソコン用のヘッドセット(イヤホン+マイク)を使ってみました。
イヤホン端子は3.5mmで合うのですが、FC-B47のマイク入力端子は2.5mmなので手持ちの変換アダプターを使いました。
イヤホンを使えば受信音の歪みは少ないようですが、ヘッドセットのマイクでも 内臓マイク同様に口に近づけて話さないと受信音量が小さいです。
ラジオなどの音響機器のイヤホン用出力端子からケーブルでFC-B47のマイク入力端子に音声を直接送って送信すると、受信側FC-B47のスピーカーから多少の歪みはありますが大きな音が出ます。
一番の問題は内臓マイクの出力が小さいことのようですが、同時通話時にハウリングが起きないようにマイクの感度を下げているのでしょうか。
サーというノイズは、送受周波数や液晶画面を制御するデジタル回路から受信回路のアナログ部分に流入しているものでしょう。
アンテナからの高周波電流を増幅しやすい周波数に変換するときに変換ノイズが発生しますが、それにしては大きすぎるので、デジタル回路からの流入だと思います。
ノイズの流入は、回路間を電磁遮蔽や静電遮蔽しただけでは防げず、デジタル回路のアースの電位とアナログ回路のアースの電位が等しくないのが原因です。
いよいよ、FC-B47の通信距離はどれくらいか? の実験です。
1人での実験なので、ベビーモニター機能を使いました。
FC-B47のベビーモニター機能は、トランシーバーAから信号を送ると、それを受けたトランシーバーBが送信状態(送信状態なら受信状態)に切り替わるというものです。
トランシーバーBを赤ちゃんの側に置けば赤ちゃんの声や周囲音が送信されます。
個体差が大きい機種なのか知りませんが、私が購入したものでは受信音が小さすぎるのでベビーモニターには使い難いです。
(なお、ベビーモニターとして使うときは電波の出力を1mWに切り替えた方が傍受される危険が幾分小さくなります)
トランシーバーBを2階の部屋のラジオの側に置き、トランシーバーAを持って外を歩いてみました。
辺りは木造2階建てが多く、所々に空き地がありますが、直ぐに見通し外になってしまう住宅街です。
結果、100mぐらいまでは変わりなく聴こえ、200mになると場所によっては途切れます。
300m離れると場所を選ばないと聴こえません。
ベビーモードではスケルチが切れないので意外に遠くまで、という印象です。
(スケルチは受信電波が弱くなると音声出力を出さない機能で、雑音に混じった音声を聞き取りたいときはスケルチを切ります)
次に、トランシーバーBを屋上に上げ(地上高9mぐらい)に設置して何処まで通信できるかやってみました。
その結果、地面に立った高さで 1.4kmぐらいは届きました。
もちろん、1.4km圏内なら何処でも通じるということではありません。建物の陰では通じません。
特定小電力トランシーバーが使っているUHFの電波ではアンテナの高さがものを言うので、2.3kmほど離れた所にある鉄道の跨線橋(渡線橋)の上で試してみました。
何と! スケルチを切らずに繋がりました。
トランシーバーAとBの間は木造2階建てが多い住宅と商業混在地です。
私が持っている特定小電力トランシーバーの中では、FIRSTCOM FC-B47 が一番遠くまで届く結果となりました。
アンテナ長が4分の1波長あるので利得が高いのでしょうか。
特定小電力トランシーバーのアンテナは、絶対利得で2.14dBi(ダイポールアンテナの絶対利得)まで許されるようなので、マニア用に垂直ダイポール付きも発売して欲しいですね。
調子に乗って、3kmほど離れた所にある跨線橋の上で送受信を試みてみましたが、全くの無感でした。
FC-B47 は電波そのものの通信距離はあるのかも知れませんが、受信音量が小さすぎなのが何とも・・・