気象衛星NOAAからの画像電波を受信してみた
niftyドメインで公開NOAAはアメリカ海洋大気局所属の極軌道気象衛星です。
(National Aeronautics and Oceanic and Atomospheric Administration)
極軌道気象衛星は、北極と南極の上空を通る軌道を周り、地球の全面を日に2回撮影します。
撮影した高解像度の画像は、1.7GHz帯のデジタル信号で送ってくるので簡単には受信できません (HRPT:High Resolution Picture Transmission) そこで、低解像度に変換して137MHz帯のアナログ信号で自動で送ってくるものの受信を試みます。 (APT:Automatic Picture Transmission)
NOAAからの電波は電界方向が 回転している円偏波なので、 アンテナ線がバネの様に螺旋状になっているヘリカルアンテナや、 地デジ用アンテナ2本を90度ずらして合わせた様なクロス八木アンテナを使うのが効率的なのですが、 これらのアンテナには受信できる方向に選択性(指向性)があるので、 アンテナを動かして衛星を追う必要があるために大掛かりになってしまい、特にいい加減な私には向かない方法です。
そこで、最も簡単なアンテナであるダイポールアンテナを設置しました。
ダイポールアンテナも90度方向からの電波を能率よく受信する指向性アンテナですが、利得が低い分指向性は緩やかです
ダイポールアンテナは使用電波の波長の4分の1の長さの金属線や金属棒を、 同軸ケーブルの芯線と外皮導体にそれぞれ接続して、下記図のようにしたものです。
正確には、金属線や金属棒の太さによって4分の1波長より短くし、これらの金属線(金属棒)を同軸ケーブルに接続するときには 同軸ケーブルの外皮導体に高周波電流が流れるのを阻止するために、バランと言われる平衡ー不平衡変換回路を入れるのですが、 受信用の場合には特に考慮する必要はありません。
(平衡や不平衡は大地に対して言います。大地に対して電位が異なれば不平衡、同電位なら平衡です。 ダイポールアンテナは平衡、同軸ケーブルは不平衡。電灯線や電力線は不平衡、電話線は平衡です)
下写真は設置したダイポールアンテナです。電線の上に見える青い横棒がアンテナです。
百円ショップで売っているガラスファイバー製の園芸で使う青い棒に、長さ54cm直径1mmのアルミ線を2本沿わせ、 前述したようにテレビ受信用の同軸ケーブルの芯線と外皮導体にそれぞれ接続しました。
写真は長さ2.1mの棒を切らずに使っているので長いですが、実際のアンテナ長は約半分の1mぐらいです
アンテナの向きは、アンテナの直角方向が東西に向くようにしました。
NOAAは南か北の方向から近づいてきますが、高度(仰角)が高くなるのは、 天頂付近を除けば、東か西方向なのでその方向をアンテナの利得が高い方向にします
受信機はパソコンのUSB端子に接続してみる地上デジタルチューナーを広帯域受信機に転用したものを使います。
⇒ USBワンセグチューナーを使ったソフトウェアーラジオSDR#
気象衛星が見える時刻と方向を知るには、Orbitron というソフトを使います。無料で使えるソフトです。
画像情報などで、画像化して初めて受信成功と言えるのですが、とりあえず、NOAAからの電波の受信確認をしました
左側の同心円が描かれている方がOrbitronの画面です。見づらいですが、同心円の左側の黄色い絵が衛星(今回はNOAA18)を表しています。
そして、図の右側の山の様になっているのがNOAAからの電波の強さとその帯域を表しています。
図の山の幅で表されている帯域は30KHz以上あります
上部の 137.914.331 は受信周波数ですが、実際の受信周波数は、137.9125 MHzです。
受信機の基準周波数がずれているために表示もずれています
気象衛星NOAAのAPTの画像化には定番ソフト「WXtoImg」を使いました。
受信機ソフトSDRSharpから出る音声信号を画像化ソフトWXtoImgへ入力するには、 パソコンの音声出力端子と入力端子を音声用ケーブルで繋ぐのですが、 内部で繋いでしまう仮想オーディオケーブル「VoiceMeeter」をインストールしました。
仮 想オーディオケーブルはVoiceMeeterの他にも幾つかありますが、 パソコンの録音デバイスと再生デバイスに仮想オーディオケーブルを設定するのは同じです
(この設定は、気象画像の再生が終わったら元に戻してください。戻さないと、スピーカーから音は出ず、録音も出来なくなります)
先ず、WXtoImgを起動し、File ⇒ Update keplers でネットから衛星の最新の軌道データーをダウンロードします
次に、Option ⇒ Ground Statoin Location で受信する地点を設定します。
File ⇒ Satellite Pass List で受信地点の上を通過する衛星のリストが表示されます
File ⇒ Record ⇒ auto record に設定すると、画面左下に次に受信可能な衛星、電波の周波数、時刻が表示されて待ち状態になります
受信機の周波数を合わせ、音声出力(イヤホン端子)とパソコンのマイク端子を、 百円ショップなどでも売っているオーディオコードで繋げておけば自動的に受信して記録しておいてくれます
音量(入力レベル)は、画面右下に表示される Vol が緑色50~70ぐらいにしてください。
下記は、2016年9月17日に受信した画像(WXtoImgによる擬似カラー)
360度地平線上が開けた高所に、衛星を追尾できる高利得の八木アンテナを設置すれば、 受信点から離れた上空を飛んでいる衛星からの電波が受信できるので、広い範囲の画像を得ることが出来ます
受信機は136~137MHzがFMモードで受信できることが必要ですが、 安価な広帯域受信機やアマチュア無線機は、音声通話を聴くのが目的のために受信できる帯域幅が15KHz程度と狭くなっています。
しかし、気象衛星からの画像信号を良好に受信するためには帯域幅が50KHz必要です。
帯域幅を変えられる受信機は高額なので、手間は掛かりますが、このページで紹介した、USB端子に接続して使う地上デジタル受信機 (国内用ではワンセグ受信)を転用するのがもっとも安価な方法です。
長期間に渡って受信を楽しむ場合は、雨の影響で信号の位相が乱れ、それによって画像が乱れることがあるので、アンテナを雨に強い構造にし、 アンテナと受信機を繋ぐケーブル(給電線)はなるべく雨に当たらないようにしてください。