電気回路でコンデンサーが並列接続されているのはノイズを防ぐ方法の1つ
コンデンサーは、絶縁物を2枚の金属板で挟んだ構造を持ち、電気を蓄えたり、高い周波数の交流ほどインピーダンスが低くなるという性質を持っています。
ところで、電気回路図や実際に組み立てられた基板を見ると、コンデンサーが並列接続になっている部分をたくさん見ることが出来ます。
自動車内で簡単に電源を取ることが出来るシガレットコードのような簡単な物でも下記回路図の様にコンデンサーが並列に接続されています。
コンデンサーを並列に接続すると容量はそれぞれのコンデンサーが持つ容量の和になりますから、その和の容量のコンデンサーを1つ接続すればよいと思われます。実際、大容量のコンデンサーが高価なので安価な低容量コンデンサーを複数使うことがあります。
しかし、電解コンデンサーとセラミックコンデンサーというように絶縁物が違うものが並列接続されている場合は並列接続の意味が異なります。
アルミ電解コンデンサーは大容量のものが作りやすいですが、数100kHzより高い周波数では性能が落ちます。 逆に、セラミックコンデンサーは大容量は作り難いですが高い周波数でも性能が維持できます。
たとえば、前段で発生したノイズが電源ラインを通して次段に伝わるのを防ぐには、 ノイズの低い周波数成分は電解コンデンサーでアースに落とし、ノイズの高い周波数成分はセラミックコンデンサーでアースに落とします。
扱う周波数が短波帯ぐらいまでならコンデンサーの選択ぐらいでよいのですが、高い周波数になると別の障害が出て来ます。
高い周波数になると、部品としてのコンデンサーにインダクター(コイルの成分)が入ってきてしまいます。
ということは、部品としてのコンデンサーがコンデンサーとコイルを直列に接続したものになるということです。 コンデンサーにコイルを接続すればコンデンサーとコイルの間でエネルギーが往復するので、或る周波数で共振します。
コンデンサーとコイルの直列接続では、共振周波数で両端のインピーダンス(交流回路における抵抗のようなもの)が下がるので、下図の様になります。
図の様な状態では、電源ラインとアースにコンデンサーを入れてノイズ成分をアースに落とそうとしても共振周波数成分のノイズしか減りません。
そこで、容量の異なる複数のコンデンサーを並列に入れて、複数の共振周波数を作って広い周波数でノイズ成分をアースに落とそうと考えます。
コンデンサーの並列繋ぎでノイズを少なくする方法は、回路図には無い実装技術です。
問題は、共振する周波数が、部品単体のCとLの値だけでは決まらないことです。Cには浮遊容量が影響しますし、Lにはコンデンサーまでのプリント基板の銅箔の長さや幅なども影響します。 そこで、ノイズを落としたい箇所(たとえばLSIのV+)とアース間に周波数ごとの強さを測定できる「スペクトラムアナライザー」を繋ぎ、ノイズが減るようにコンデンサーの容量値を増減させて実装するコンデンサーの容量を決めます。