身近な自然と科学

スマートウオッチのリチウムイオンバッテリーの再生は可能か?

脈拍や血圧から睡眠状態まで測れるブレスレット状のスマートウオッチと言われる物があります。 腕時計より小さくて軽いのですが、幾種類かのセンサーが組み込んであり、スマホアプリと連携して健康状態や運動状態を測り記録するものです。
精度はそれほど期待できるものではありませんが、電子回路やセンサーの小型化と小さいのに大容量のリチウムイオン充電池があったから安価に製品化出来た物の1つです。

以下は、充電が出来なくなったスマートウオッチ(asknut QDYF-818)が動くようにならないか? と模索した記録です。
このスマートウオッチは、USBソケットに差し込んで充電するものですが、挿し込んだときの一瞬だけUSBから電流が流れるだけでまったく反応しなくなってしまいました。

リチウムイオンバッテリーの再生法

リチウムイオン電池は過充電や過放電(使い過ぎ)によって発火する危険があるために放電充電を制御する回路が組み込まれています。 過放電に限って言えば、電池を限界まで使った後に充電しないで長期間放置しておくと、電池内外での自然放電によって電圧が下がってしまうために制御回路によって充電が出来なくなります。
通常、この状態になると廃棄しますが、一瞬、充電電圧より若干高い電圧(5V程度)を加えると充電器で充電出来るようになります。これは、制御回路が働いて充電を遮断する前の一瞬を掻い潜って僅かでも充電するもので、数回繰り返すとリチウムイオン充電池の電圧が高くなって充電を遮断する制御回路が働かなくなるようにするものです。リチウムイオン充電池に電池としても機能が残っていれば再使用出来るようになります。当然、電池としても機能が残っていなければ再生出来ませんし、劣化して容量が減ってしまった電池では容量は復活しません。

スマートウオッチ(asknut QDYF-818)でリチウムイオンバッテリーの再生法を試みてみた

先ず、スマートウオッチの通常の充電法であるUSB端子から何回も5.7Vの電圧を掛けてみました。冒頭記したように、一瞬、電流が流れるだけでしたが、数十回続けて3秒間ぐらい流れるまでになりました。
しかし、スマートウオッチの表示面は暗いままで反応無しです。

USB端子からではリチウムイオンバッテリーに繋がるまでに電圧低下が落ちているに違いありません。USBの出力電圧は5.5Vぐらいですが、リチウムイオンバッテリーの充電電圧は、4.2V程度なので直接繋がっていないのは明らかですが。
そこで、スマートウオッチ内臓のリチウムイオンバッテリーに5.5Vを直接加えてみることにしました。
このスマートウオッチは裏側のネジ4本を外すだけで容易に筐体を開けることが出来ます。ネジも100円ショップで購入できる精密ネジ用ドライバーで合うプラスネジでした。
ただ、表示素子と本体基盤が薄いフラットケーブルで接がれているので切れないように注意します。
スマートウオッチasknut QDYF-818の内部写真
リチウムイオンバッテリーを外すと面倒なので、上写真の下に示した+とーに5.7Vを直接加えてみました。

その後、USB端子から5.7Vを加えると、下写真の様に表示され、充電が始まりましたが、直ぐに充電が止まってしまいました。
スマートウオッチ(asknut QDYF-818)の通電時の表示面
リチウムイオンバッテリーが完全に劣化しているようです。
このリチウムイオンバッテリーは、RZJ 451220 3.7V 80mA 0.29Wh で、大きさは実測で、20mm×12mm×4mm程度なので同サイズのバッテリーを入手できれば交換可能です。
筐体を開けて問題だと思ったのは、このスマートウオッチは表示面を押すことで機能を切り替えているので機能を切り替える度にリチウムイオンバッテリーに圧力を掛けてしまうことです。ご存知の様にリチウムイオンバッテリーは劣化すると膨らみ始めるのでバッテリーに力が加わって不具合を起こし兼ねないということです。

リチウムイオンバッテリーは2019年のノーベル賞受賞にもなった大発明ですが、なぜか、電池交換を前提に作られていません。充放電500回で容量が60%にまで減るそうなので普通に使っていれば2年ぐらいは電池交換の必要は無い訳ですが、リチウムイオンバッテリー以外の部品の耐久年数はもっとあるので、電池の寿命が製品の寿命を決めるのはおかしいです。
製品を生産する側からすれば買い替え需要が電池の寿命で発生するのでありがたいことかも知れませんが、