Longwei スイッチング電源の使い方
何を血迷ったか大して使い道が無いのに、2019年12月8日、「Longwei スイッチング電源 可変直流安定化電源 DC 30V 10A 」をアマゾンで買いました。所謂「中華製」で、読み難い日本語の説明書が付いていました。 12V5Aの抵抗降圧型定電圧電源と12V5Aのスイッチング型の電源も使っていないのに、どうしようもないです(笑)
Longwei スイッチング電源 可変直流安定化電源の簡単な使い方
- 左側下の[ On/Off ]ボタンを押します。すると、LED表示の上段の電圧と下段の電流が全桁表示されます。
- 下側右の[ Voltage ]の出力電圧値セットノブを反時計回りに回し切ります。
- 下側右の[ Current ]の電流値セットノブを時計回りに回し切ります。
- 下の左側マイナス出力端子と右側のプラス出力端子の間に電気回路や電子機器などの負荷を接続します。 バナナプラグを接続するようになっていますが、被覆を剥いだ電気コードも接続出来ます。(バナナプラグとワニ口クリップが付いたコードが付属しています)
- 電圧表示の値が繋いだ機器の所定の電圧になるように[ Voltage ]ノブを時計回りに回します。 電圧表示の反応が遅いので過電圧に弱い回路や機器の場合は慎重に電圧を上げてください。
スイッチング型電源のメリット
冒頭に触れた抵抗降圧型電源というのは、入力と出力の電圧の差をトランジスターを可変抵抗器にして熱にしてしまう方式です。
たとえば、変圧器で交流100Vを12Vに落としてからダイオードで直流にして5V1Aの出力を得ようとすると、大雑把に計算すると(12-5)V×1Aで7Wを熱として放散して5V1Aの電源を作ることになります。
スイッチング型は、負荷の両端の電圧が上がったら電流を流すの止め、下がったら電流を流すというものです。 もちろん、高速で繰り返し、電流を流さない間はコンデンサーに蓄えられた電気を放出するようにして変動幅(リップル)を小さくしています。
スイッチング型電源は負荷の両端の電圧が上がると電流を止めるのでこの間は電源では電気を消費しません。 実際の回路では制御回路での電力消費、電流を流したり止めたりするときにスイッチに使う半導体素子のアナログ機能部分を通過するので抵抗が生じて熱になり、原理回路の様に電力消費0にはなりません。 それでも、抵抗降圧型に比べれば大幅に無駄な電力消費が少なくなるので機器が小さく出来ます(鉄に銅線を巻いた変圧器を使わずに済むのが小型化軽量化にもっとも貢献しています)。 その代わり、電流の切断を高速で繰り返すので、出力電圧にリップルが生じ、ノイズを空間に撒き散らす欠点があります
今回購入した「Longwei スイッチング電源 可変直流安定化電源 DC 30V 10A 」はスイッチングなので、実測値で7cm×21.5cm×14.8cm 約1.4kgと小さく軽いです。
配送効率化のために荷物のサイズを統一しているのだと思いますが、 例によってアマゾンから送られてきたときは両手で持つほど大きな箱でしたが、開封したら外箱の数分の1の小さな箱が入ってました。
Longwei スイッチング電源 可変直流安定化電源に対する誤解
この製品には電流値を調整するノブが付いているので出力電流が調整出来る様に誤解することがありますが、この製品の電流調整は実験には便利ですが、電源として使う分には意味はありません。
それどころか、初めて使う場合は出力電圧が出ずに壊れていると誤解を招くことになります。 というのも、この電源では設定した電流値を超えると出力が0Vになります。ですから、電流値設定が0Aになっていたら電圧セットノブを幾ら回しても出力は0Vのままです。
この製品の 電流値設定ノブの使い方は、たとえば、正常では500mA流れ、1A流れたら焼けて壊れる回路を実験しているときに電流値を600mAぐらいに設定しておけば、 誤配線や熱暴走などで大きな電流が流れても600mAで入力電圧が0になるので回路を壊さずに済む可能性が高くなるというものです。
ですから、製品として売られている機器の電源として使う場合は右に回して5Aや10A流れるようにしておきます。
電流値を設定する方法
実験で設定する電流値ですが、電流設定ツマミに目盛が無いので実際に電流を流してみないと設定出来ません。 電源の出力端子にセメント抵抗の様な大きな消費電力に耐えられる抵抗を繋いで実際に電流を流してツマミを設定します。 ここで注意しなければならないのは、負荷、この場合は出力端子に繋いだセメント抵抗に電圧を掛けないと電流が流れないということです。 電流設定ツマミを回しても流れる電流は増えも減りもしません。 電流を増やすには電圧を上げ、電流を減らすには電圧を下げます。電流値セットツマミは出力電圧が0Vになる電流値をセットします。
定電圧電源がバッテリーの充電に向かない理由
この電源の出力電圧を0Vにしてバッテリーを繋ぐと、電流が0Aでも下記写真の様にバッテリー電圧が表示されます。
12Vバッテリーぐらいでは逆流しても壊れないと思いますが、起電力が生じる負荷の場合は逆流防止用ダイオードを繋いだ方が安心です。
自動車の起動用に使われる鉛バッテリーの充電方法には、定電圧法と定電流法があります。
定電圧法は、バッテリーの電極間に一定の電圧を掛け続ける充電です。この充電法は充電器の回路は簡単ですが、充電が進んでくるとバッテリーの電極間電圧が上がるので充電電流が減少することです。
正常なバッテリーの場合はこれでよいのですが、バッテリーの電極板の劣化が進むと電池の内部抵抗が増加して充電は進まないのにバッテリーの電極間電圧が上がります。結局満足な充電が出来ません。
下写真は、かなり劣化した(内部抵抗13.9mΩ)鉛バッテリーを、充電電流約2Aで充電し始めて2時間後には同じ電圧で充電電流は約1.5Aになってしまいました。
定電流法は、バッテリーの電極間に流れる電流を一定に保ちながら充電するので劣化が進んだバッテリーでも定電圧法より充電が進むと期待できます。
といっても、電流を一定に保つためには電圧を上げなければならないので限度がありますが、定電圧法より有利です。
今回購入した電源では定電圧充電法は繋いで規定の電圧で電流が流れるように電流値設定ツマミを回すだけですが、 定電流法では電流値を監視しながら電圧を上げていかなければなりません。
充電開始から3時間ほどは充電電流が2Aになるように電圧を調整していましたが、面倒なので後は 定電圧法で計15時間充電し、充電終了から5時間後のバッテリーの開放電圧は12.9V、内部抵抗は10.9mΩ。内部抵抗は若干下がりました。
上記の鉛バッテリーで充電を始めて2時間後に充電電流を2Aにするのは、電圧を15.5Vにしなければなりませんでした。
Longwei スイッチング電源可変直流安定化電源の後に、秋月電子で売られている鉛蓄電池充電器を接続すれば自作充電器になります。
スイッチング電源がモーターや電磁石などの誘導負荷に弱い理由
誘導負荷というのは、電磁力を使ったモーターや電磁石のようなコイルを使っている回路です。ここで対象になるコイルは鉄などの磁性体に絶縁被覆した銅線を巻きつけた物ですが、コイルに電流を流すとその流れを妨げるように電気が起きます(逆起電力)
この逆起電力は、電源側に流れ込んで出力電圧を下げるように働いたり、電源側のデバイスを破壊することがあります。
逆起電力から電源を守るには電源と負荷との間に逆流防止用のダイオードを入れるか、電源の容量を大きくして軽減します。使い方が決まっている電源の場合は容量が大き過ぎるのは無駄ですが、何に使うか判らない実験用電源では大きな逆起電力が発生する負荷も考えて容量を選ぶことが大切です。
重い変圧器を使った抵抗降圧型の電源でも誘導性負荷を繋げば逆起電力が電源側に流れ込んできますが、出力端の直前に容量の大きなコンデンサーが入っているので逆起電力はコンデンサーに吸い込まれ、また、構造が単純なのでデバイスが障害を受けることは少ないです。(2019年12月11日更新)