市販されている簡単なマイナスイオン発生器
2022年2月16日作成
空気清浄機やエアコン、髪を乾かすドライヤーなどにはマイナスイオンを放出すると謳われている物があります。
これらの多くは、空気中で放電を起こしたり、マイナスの高圧が印加されたブラシ状の電極を空気中に露出することによって、マイナスイオンと言われるものを生成しています。 「マイナスイオンと言われるもの」というのは、化学でいうイオン状態とは異なるからです。
化学でいう「イオン」は、例えば、塩($HCl$)を水($H_{2}O$)に入れると水素イオン$H^{+}$と塩素イオン$Cl^{-}$になります。
ただ、辞書には、「広義では電荷を帯びた分子をイオンという」とあります。
空気清浄機のキャッチコピーには「プラズマ」という語も出てきますが、化学用語のプラズマは原子核の周囲に存在している電子が自由に動き回れる状態を言います。 電子を自由に動き回れるようにするには膨大なエネルギーが必要で、現状では研究機関で極々短時間作れるだけです。
では、空気清浄機などでいうマイナスイオンとは何か?
マイナスイオンがブームになった切っ掛けは、水しぶきで霧状になっている滝の近くは気持ちが良い、 それはマイナスイオンが存在するからだ、というものでした。
水滴や氷粒は空気中で激しく動かされると摩擦によって電気を帯びます、 これが雷の原因ですが、滝でも水滴が摩擦によって電気を帯びることは考えられます。
そうならば、空気清浄機などで使われるイオンとは帯電した分子かも知れません。
先日、「マイナスイオン+オゾン」という表示と安価に釣られて「Air cleaner Loca 車載空気清浄機(トーシン産業)」を買いました。景品やクレーンゲームの商品に使われる玩具っぽい物です。
筐体裏の型板は
オゾンを発生させるには数キロボルトいう高電圧が必要で、 その高電圧を得るためには、トランスを使って昇圧するか、ダイオードとコンデンサーを使った倍電圧回路を縦列接続する訳ですが、筐体を開けてみると、下の写真の様にこれでオゾンやマイナスイオンと言われるものが出るの? というほどシンプル
上写真中の左側の1が高圧発生器、ファンの上の2と下の3が高圧発生器の出力で端にカーボンブラシが付いています。高圧発生器からの出力はもう1つあるのですがファンに隠れて写っていません。
この製品に付けられているカーボンブラシの写真
照明の加減で光っていますが、実際は黒です。
高圧発生器の両端の止めネジをとって裏返してみると、
Negative-ion Generator HYFD12-M 入力は12V、出力は-3.5kV±1kV
マイナスイオン発生器です。出力は白いコードが3本出ていますが極性などの表示はありません。
検索しても安価なマイナスイオン発生器として販売サイトは出て来ますが、参考回路や内部の回路図は見つかりませんでした。
アマゾンでも似た形状のマイナスイオン発生器が665円で売られていて、その説明には
元の低電圧を電気パルスと振動を利用して昇圧し、出力電圧はマイナス4kV、マイナスの高電圧を印加されたカーボンブラシでコロナが発生し、空気中の酸素分子と反応してマイナスイオンが生成される。
空気清浄機としての適用範囲は11平方m~20平方m、空気清浄機容量1時間あたり50立方m
負イオン濃度は1立法cmあたり7×106PCS(10cm)
とあります。
高圧電気を作る方法は、圧電トランスのようです。圧電トランスは、電気振動を圧電素子で機械振動に変換し、その機械振動で圧電素子に歪を生じさせて高電圧を作ります。
高電圧を生じる圧電素子の身近な例では、点火用電池を使わないガスコンロに使われています。
圧電トランスの身近な例では、液晶ディスプレイ用バックライトの陰極管を発光させるための高電圧を作るときに使われていました(現在の液晶ディスプレイのバックライトはLEDが多い)
通信機器で使う、雑多な周波数が混じった高周波電流から必要な周波数成分だけを選択するために使う水晶フィルターやセラミックフィルターも圧電トランスの仲間です。
マイナスイオンを発生させる方法として先が尖った電極に負の高圧電気を印加して空気中に露出する方法があるようなので、この車載空気清浄機はこの方法です。
先が尖った電極(ブラシ)に高電圧を掛ける方法は静電気を除く方法と同じです。工場などで製品が帯電している場合には、設置した導電性ブラシか高電圧を掛けた導電性ブラシの下を通します。
この原理なら空気中に浮遊する分子がマイナス電気を印加されたブラシ先端でプラスの電気を失ってマイナスの電気だけを帯びるのでしょうか
この空気清浄機を稼働させても全くオゾン臭はしませんでした。
イオン発生器と同じ様な形状の高電圧発生器も安価に入手できるので、オゾンを発生させたい場合は高電圧発生器を使った方がよいです。