電撃殺虫ラケット(NCS-R20)の仕組み
2022年7月17日作成 7月21日更新
暖かくなると蚊に悩まされます。とくに寝ている間に頭部を刺そうと狙っている蚊の羽音は不快極まりないです。 また、暑い夜には無防備になってしまう足は腫れて痒くなってから刺されたのに気づくという、何とも嫌なものです。
そこで前々から気になっていた、テニスやバトミントンのラケットの様な形をした「電撃殺虫ラケット NCS-R20(Electronc Mosquito Bat)」という物を買ってみました。
ラケットのネットの部分は、高電圧が掛かる電極になっていて、
網目の大きな金網(マイナス電極)、網目の小さな金網(プラス電極)、網目の大きな金網(マイナス電極)
の順に5ミリほどの間隔を開けて付けられた3層構造になっています。
このネット部分で蚊の様な小さな虫を軽く叩くと、虫が外側の大きな網目の金網と中の網目の小さな金網に触れ、その瞬間、虫に高電圧が掛かって虫が死にます。
薄暗い場所で虫がネットに掛かると燃えたのでは無いかと思うくらい火花が出ます。
高電圧を作る仕組み
興味は、高電圧を作っているかです、
早速、電撃殺虫ラケット NCS-R20(Electronc Mosquito Bat)を分解してみました。
オゾン発生器によく使われているブラックボックスの高電圧ユニットが使われて居るのかと思ったのですが、筐体を開けてみると、 トランジスター、抵抗、コンデンサー、ダイオード、変圧器という、何十年も前にタイムリップした様な懐かしい回路でした。
回路図に起こすと
変圧器とトランジスターで発振回路を作り、変圧器の二次側に生じた交流高電圧をコッククロフトウォルトン回路で2倍に昇圧して大容量コンデンサーC3を充電しています。
この電撃殺虫ラケットの電気回路を参考に回路を作ってみました。
下の回路内のコイルL1,コイルL2,コイルL3は同一 変圧器(同一の閉じた磁気回路内)内にあります。
コイルL1の電流変化が電磁誘導によってコイルL2に電流変化を誘起してトランジスターQ1のベース電流と合わさってベースに流れて増幅されます。
発振するためには同相の電流変化をベースに入れる必要があるので、コイルL2の接続がコイルL1と逆になっています。
抵抗R1はベース電流を調整するために使いますが、音声増幅器では無いので歪んでも構わないのでベース電流を多めに流した方が発振出力が大きくなります。
発振するとコイルL1とコイルL3の巻き数比に比例した電圧がコイルL3に誘起されます。コイルL1の巻き数が10で、コイルL3の巻き数が100でしたら、コイルL1の両端の電圧の10倍の電圧がコイルL3の両端の電圧になります。
ダイオードD3は必須で、D3が無いと出力電圧が上がりません。
コッククロフトウォルトン回路は、ダイオードD1とD2,コンデンサーC1とC2で構成されています。
コッククロフトウォルトン回路は、下図の赤い枠の中が1段で入力電圧の2倍になります。
赤枠の中の回路を縦列接続してより高い電圧を得ることが出来ます。
コッククロフトウォルトン回路のメリットは、使用するダイオードやコンデンサーの耐圧電圧は、入力する交流の尖頭電圧(波高値)を満たせば何段目の回路でも同じ物でよいということです。
出力電流はコンデンサーの容量が大きいほど多く取れます。
電撃殺虫ラケットの回路の説明に戻ります。
D4は金属網に高電圧が掛かっていることを示す発光ダイオードです。
回路図では抜けていますが、電流を通し難い抵抗値の大きい抵抗が 大容量コンデンサーC3と並列に入っています。この抵抗は、スイッチを切った時に金網に掛かっている高電圧を早く下げるためのものです。
大容量コンデンサーのマイナス電極は網目の大きな金網に、大容量コンデンサーのプラス電極は網目の小さな金網に接続されで、 電気抵抗の小さい虫が挟まった瞬間にコンデンサーの両端が短絡状態になって一気に大電流が流れます。
電極になっている金網に触れた部分が蝋質だったり蛾の様に鱗粉が多い場合は、この電撃ラケットでは逃がしてしまいます。
電撃殺虫器を自作するには、変圧器の入手が難しいです。
家のコンセントまで来ている商用電源100Vを絶縁変圧器を通してからコッククロフトウォルトン回路で昇圧して行くと、電撃殺虫ラケット NCS-R20は出力2500Vなので、コッククロフトウォルトン回路を5段接続して3200Vを得る方が簡単でしょう。
コッククロフトウォルトン回路で使うダイオードとコンデンサーの耐圧は、商用電源の波高値は2の平方根×100なので約141V、余裕を持たせて200Vあれば十分です。
高電圧を作るのは簡単ですが、電子工作では危険な部類に属するので安全対策がされた製品を購入した方が私的によいと思います。