身近な自然と科学

一番簡単な電波発信機 火花式

今では携帯電話などで手軽に利用できる電波ですが、最初に電波を実用化したのは、1895年イタリアの マルコーニ です。
当時は、IC や トランジスターはもちろんのこと、真空管さえ無い時代でしたから、 このページを開いた皆さんが「自分で電波発信器を作ってみたい!」と思われた状況と大して変わりはありません。

手許にAM放送(NHKなど)が聞こえるラジオがありましたら電源を入れてみてください。 「プツ、プツ」というような雑音が入ることがあると思います。こんなときは、室内の蛍光灯を点けた、扇風機の電源を入れた。 あるいは、雷が来そうなときか来ているときです。
電波は、雷の放電や電源を入れたときや切ったときに火花が出ると発生します。 電源の場合は、電源を切ったときに出るのですが、機械的なスイッチの場合は電源の入断を数回繰り返して入る場合が多いので電源を入れたときにも出ます。
マルコーニが作ったものは、火花送信機と言われるものです。 これは皆さんにも簡単に作れます。下の図は作り方です
火花送信器の作り方
なぜ上図のような簡単なもので電波が出るかといいますと、電磁石になっているときには電気は磁力を作っていますが、この磁力は鉄の様に磁力に反応するものを近づけなければ理論的には仕事をしていません。
しかし、電気を断たれると、急激にコイルを流れる電流が0になるので、それを妨げるように誘導起電力が生じます。
電流が限り無く0になると、同じ電気エネルギーでもコイルの両端間は高電圧になって、空気の絶縁を破って火花が出ます。 そして、周囲に強い磁界を作り、この磁界が電界を作り、この電界が磁界を作るという繰り返しで電波となるのです。

1901年マルコーニは、火花送信機により大西洋横断通信に成功しました。
もちろん、上図のような簡単なものではありませんが、原理は同じです。異なるところは、電磁石とそれに流す電気の大きさです。
稲光と雷鳴が対で起こるように、火花には音が付き物で、火花送信機を操作する方が耳に障害を負ったほど大きな音がしたそうです。
もうひとつ異なる点は、不要な電波を出さないようにした工夫です。
火花送信機を作ってみると解りますが、ラジオやテレビのどのチャンネルにも電波が入ってしまい、これでは通信がゴチャゴチャ( 混信 という)になってしまいます。
実用化されたものは、フィルターなどを入れて不要な電波は放射しないようにしたようですが、最後まで解決されなかった問題です。

日本ではマルコーニが実用化に成功した翌年の1896年に研究がはじまり、1903年に長崎県三重ー台湾八尺間1170kmの通信に成功 しました。
日露戦争時、ロシア艦隊の南下を知らせた通信は火花送信機によっていました。