鳥が電線にとまっても感電しない理由
感電とは外部からの電気が生物の身体の中を流れ、痺れたり不快に感じたりする状態を言います。
鳥が電線に止まっても感電しない理由として一般的に言われているのは鳥が両脚で電線に止まった場合、両脚間の距離が短いために電線の電気抵抗が小さくて、両脚間の電位差が小さいからというものです。
例えば、直径1cm、長さ5cmの銅線の抵抗は、銅の質や温度によって変わりますが、大きく見積もっても約0.0009オームですから、切りよく1万アンペアーの電流が流れていたとしてもオームの法則 E=I×R から、E=10000×0.0009=9 となって、9ボルトにし かなりません。
鳥の両脚の間が5センチメートルなら両脚間に9ボルトかかっていることになります。
上図に当てはめると、鳥の身体を流れる電流は、9(V)÷Br(Ω)となります。
鳥の電気抵抗(Br)は不明ですが、人間が素手で、9ボルトの乾電池の電極間を触っても感電しませんから、鳥も感電しないでしょう。
人間の場合、感電によって痛みを感じるのは身体の中を流れる電流が5mA、それが50mAになると命に関わり、100mAになると死亡すると言われています。
停電事故の原因が蛇だったというのがありますが、蛇が鳥のように1本の電線に絡まった場合には、蛇の長さを1メートルとすると、先の鳥の例のように1万アンペアーも流れていたとしたら20倍になりますから、蛇の頭と尾の電位差は180ボルトになります。これは感電します。
しかし、この程度では送電線が切れない限り停電しません。
感電について違う見方をしてみましょう
下の図で、赤い線と青い線は電線を表しています。
感電する人、動物はどれでしょう?
答えは、人A とヘビAで、場合によってはヘビBも感電します。
ヘビBの場合は、雨や雪が降っていたり、海に近い所では潮風が吹き付けて塩分が電柱の外側に付着していたりすると、電柱が電気を通しやすくなり、大地から電柱の外側、電柱からヘビに電気が流れるからです。
電線に触れても電気が流れるところが無ければ感電しません。
鳥Aや鳥Bの場合は鳥の身体から電気が流れるところが無いのです。
ヘビAは電線(赤い線)から別の電線(青い線)に身体がまたがっているので身体の中を電気が流れ感電します。(200V程度の低電圧送電線では電線の絶縁被覆が剥がれていなければ感電しません)
家の中に居る人の場合は、電線(コンセントの金属部分や電気製品のコードの被覆がとれた部分など)の片方に触れても感電する場合があります。
というのは、電柱の上などにある変圧器の出力の片方が落電や機器の故障から機器を守る理由から地面に埋め込んであり、土は水分を含んでいるので電気を通し、電線と同じ働きをするためです。
人Aの場合です。
ところが、地面に埋め込んである電線と繋がっている電線に触れた場合、(上の図では人B)は電気が流れないので感電しません。
コンセントから引き出したどちらの線が地面と繋がっているかを知るには“ 検電器 ”というものを使うと簡単ですが、100ボルト以上が測れるようにした交流電圧計の入力端子の片方を湿った地面に挿し、もう一端を電線に繋げてみれば判ります。
もちろん、電圧計の針が振れた方の電線に触れると感電します。
地面に挿す代わりに手で持っても電圧計の針は振れます。
私がデジタルテスターでやってみると、コンセントの差込口の片方で74.5Vありました。こちら側が設置されていない電極です
(デジタルテスターのためか、接地されている方の差込口でも10ボルト程度の値が表示されました)
この実験は、テスターの内部抵抗が低い、手が濡れているなどの条件が重なると感電の危険があるので、 理科の先生や電気に詳しい方と一緒にやってください。
安全簡便はやはり検電器です。ホームセンターなどで千円程度で売られています。
検電器にはトランジスターなどの半導体を使ったものがありますが、昔からあるものは、 下図のように抵抗と小型のネオン管が直列に接続されたものです。
小型ネオン管は電気が流れると発光するのですが、極微量の電流なので持った部分から人体を通して大地に流れても全く不快感がありません。
電線の片方が地面に埋め込まれている理由は、高電圧の電気から家庭などで使う100Vや200Vに変換する変圧器が故障したときに、高い電圧が家庭などに流れないようにするためです。
土中を電気が流れるか確かめる実験は下の図の様に簡単に出来ます。
これは土中AからBまでの電気抵抗を測っているのと同じです。
乾いている表面の土を少し除いてテスター棒を挿し込んでみると、236kΩでした。
土中の電気抵抗の測定には電気分解による誤差を少なくするために交流を使うのですが、流れることを確かめるだけなら乾電池でも問題ありません。
もちろん、テスターを抵抗計に切り替えて使えば外部に電池を付ける必要はありません。