身近な自然と科学

いい加減な中波受信用垂直アンテナ

いい加減な中波受信用アンテナを作ろうと思った動機は、ハイウェーラジオと船舶気象通報(灯台放送)を受信するためです。
中国製短波ラジオDE1103を屋上に出すと、ラジオに付いているロッドアンテナを垂直に伸ばせばノイズ混じりに聞こえるので何とか簡単な方法で屋内でも聞こえるように出来ないかと思ったのです。

銅線を水平に張ったワイヤーアンテナは同軸ケーブルで引き込んでもノイズを拾って受信できませんでした。
ラジオを建物に近づけるとノイズが強くなるので(コモンノイズでしょう)、建物より相当高所に張らないと無理のようです。
銅線を環状にしてバリコン(可変容量コンデンサー)で同調をとるループアンテナを使えば高所に設置しなくても聞こえますが、建物近くではラジオに付いているロッドアンテナと同等ぐらいにしか聞こえま せん。
それなら、同軸ケーブルにロッドアンテナのような1m程度の電気伝導線を付けて高所に設置してみようと思い立ちました。

しかし、アンテナ長が受信波長の200分の1程度なので容量性リアクタンスが非常に大きくなって同軸ケーブルとは酷い不整合になるでしょう。
(アンテナの入力インピーダンスは0.1-j29000になりそうです)

4分の1波長にも満たない、中波や短波の接地アンテナを同軸ケーブルに整合させるには、下図のような回路にします。
垂直接地アンテナの構造とマッチング法
容量性なのでインダクタンスでそれを打ち消すためにはローディングコイルを挿入し、それから同軸ケーブルのインピーダンスに合わせることになります。
先ず、①の位置を調整して電波がアンテナに乗るようにします。
次に、②の位置を調整して同軸ケーブルのインピーダンスに整合させます。
抵抗や浮遊容量の少ないコイルを作り、適当な放送局の電波を受信しながら最もよく受信できるように上記の調整を繰り返します。
ただ、注意しなければならないのは、調整をしても整合がとれてよく電波がアンテナにのるだけで、大きなアンテナに比べて受信能力は低いですし、送信用に使った場合にも能力は劣ります。

私が作ったのは「いい加減」と言うように、同軸ケーブルの芯線に長さ1mほどのビニール被覆された鉄製の針金を接続し、アース(接地)をとる代わりに、アルミ製の支柱の中を同軸ケーブルを通し、同軸ケーブルの外皮網線に接続した被覆された針金をその支柱に巻きつけただけです。

写真では、同軸ケーブルの芯線に繋いだ針金を竹に巻きつけてありますが、巻き付けなくても受信感度は変わりませんでした。
同軸ケーブルの外皮網線に繋いだ針金をアルミの支柱に巻きつけているのは静電結合でアースをとっているつもりです。
カウンターポイズにしては頼りないですが、この支柱を鉄製の手すりに結わい付けてあるから、ノイズが減り受信能力が増しています。
受信感度はラジオを屋上に出してロッドアンテナを伸ばしたときより若干劣りました。
再現性は無いと思いますが、今回試作したものは
同軸ケーブルの芯線を接続した部分の長さ:115cm 巻き数66回
アルミ管の支柱の長さ:170cm 巻き数11回 となっています

ラジオに付属しているロッドアンテナが中波や短波などがその波長に対して非常に短くても意外に受信能力があるのは、 ロッドアンテナが受信回路の入力インピーダンスが高いところに接続されているためです。 しかし、同軸ケーブルなどの給電線はインピーダンスが低いのでロッドアンテナの様な単純なアンテナでは受信機の入力が非常に小さくなってしまいます。 それでは同軸ケーブルのインピーダンスを高くすればとなるのですが、インピーダンスを高くするとノイズを拾いやすくなります。

*カウンターポイズとは、電気がよく通る銅線などで作った大きな網を大地と平行に張って、大地との間でコンデンサーを作り、静電結合で接地効果を得ようとするものです。
網の目の間隔は短波や中波では1m程度です。
主に、砂漠地や乾燥地などで接地抵抗の少ない接地が出来ないときに使います。
送信用に使う場合には、網部分の電位が高くなって感電する惧れあるため、人間が触れないところ(高さ2.5m以上)に張ることが求められてます。
グランドプレーン・アンテナのラジアル線はカウンターポイズとも考えることが出来ます。

ところで、ラジカセなどには中波用アンテナ端子が無い場合があります。
そんなときは、下写真のようにラジオにビニールコードや被覆された銅線などを巻きつけて、その両端にアンテナからの同軸ケーブルを繋ぎます。
アンテナ入力端子が無いラジオで外部アンテナを使う方法の写真
ラジオ内部にあるバーアンテナ(フェライトにエナメル線などを巻きつけたもの)の外側にコイルを作って電磁結合で外部アンテナで受けた電波をバーアンテナに流し込んでいます。
アンテナ端子が付いている場合でも、長波や中波ではバーアンテナを通した方が良好に受信できる場合があります。
ただ、この方法ではバーアンテナでラジオの周囲のノイズも拾ってしまうので、先ず、ラジオの向きや場所を変え て、ノイズが最も少ない向きと場所を探してからにしてください。
巻き数は同軸ケーブルのインピーダンス75オーム(または50オーム)に合うようにするのが最良なのですが、受信周波数とラジオ内部の構造によって一概には決められません。上の写真の場合は巻き数10回で、ハイウェーラジオ(1620khz)が良好に受信できました。