ししおどしと転倒ます雨量計の作り方
ししおどし(鹿威し) は、そうず(添水)とも言いますが、1点で支えた竹筒に水を入れて、その水の重さで竹筒が傾き、元に戻るときに竹筒が石に当たり、間欠的に音を出すものです。
簡単に作ると下図のようなものです。
日本庭園などに音と動きを楽しむ装飾品として設置されていますが、元々は、鳥獣の害から農作物を守るために田畑に設置するものでした。
ししおどしの仕組みは簡単です。
最初は下図のようになっています。仕切り板は筒の内部にあって、筒左側の斜めに切られた部分から入った水が、筒の右側に流れ込まないようにふさいでいます。
竹筒で鹿威しを作るときには竹節を利用するので工作は簡単です。
水が筒に入っていないときには筒の左 側が重くなっていて、竹筒の左端が石に当たるように支点の位置を選んでおきます。
竹筒に水が入りだすと、徐々に支点から右側が重くなっていき、あるところで、右側が下に傾きます。
このとき、当然、竹筒の右側にたまっていた水は外に流れ出し、右側は左側より軽くなるので、竹筒の右側は跳ね上がり、左側は元の位置で石にぶつかって音を立てます。
そして、また、竹筒の右側に水が入りだします。
支点を中心にして傾けるように働く力をモーメントと言い、モーメントの大きさは
力が作用する点と支点からの距離×その力の大きさで表されます。
ですから、筒の右側から入った水を止めている仕切り板(竹筒なら節)は支点から遠い左側にある方が少しの水で、筒の右側を下に傾けることが出来ます。
実際に鹿威しを作るときには、上図の左の状態(左端がいっぱいに下に傾いている)のときに右側に水が相当量入って右側が下に傾くように支点を選びます。
少しの水で右側が傾くと、筒の左側が頻繁に下に傾いて音の間隔が短くなりすぎます。
個人的には、筒の左側が石に当たって音を立て、その余韻が消え、しばらく静寂があって、次の音ぐらいが好きです。
気象観測用の雨量計が鹿威しと同じような構造になっています。
ししおどしの筒と同じ働きをするものは、下図のようなものです。
中央に左から入った水が右に流れないように、右から入った水が左に流れ込まないようにする仕切り板があり、左右の端は平らです。
ですから、水平に置いたのでは左右どちらにも水はたまらないので何の用も足しません。
そこで、先ず、最初は下図の状態だったとします。
(天秤ばかりのように精巧に作らない限り、手を触れなくてもどちらかに傾くものです)
雨水は上にあるロート状の細い管から流れてきます。
左に傾いているので中央の仕切りも左に傾き、雨水は右側に入ります。
傾いているので、雨水は右側の仕切り板付近にたまり、ある水量になると、
その重さで右側を傾けようとするモーメントが大きくなって、下図のように傾きます。
すると、右側にたまっていた雨水は右端から流れ出、上からの雨水は今度は左側にたまり始めます。
そして、ある水量で左側も右側と同じ理由で下に傾き、雨水は左端から流れ出ます。
上から水が供給され続ける限り(雨が降っている限り)、シーソーのように繰り返すことになります。
そして、左右に振れたときに電気のスイッチが入って電気信号が出るようにしておけば、この電気信号の回数を測ることで雨量を知ることが出来ます。
貯水型雨量計(一定時間ごとにたまった水の量を量る)のように、雨量計にたまった水を棄てる手間も要らないので、遠隔地から雨量を知ることが出来ます。
この型の雨量計を、雨水を量る升が左右に転倒するので、 転倒ます雨量計 と呼んでいます。
現在では、気象庁の自動観測機アメダスなど殆どが転倒ます雨量計になっています。