身近な自然と科学

コラーゲンを食べて効果があるのか?

健康番組を観ていていつも不思議に思うのは、肌を若々しく保つにはコラーゲン を含んだ食物を摂るようにするとか言うことです。
具体的には、鶏手羽肉が良いとか。
私は肉嫌いなので、本当? と思ってしまいます。
肌に弾力性をつけているのはコラーゲンだそうですが、他の動物のコラーゲンを食べて自分のコラーゲンが増えるのでしょうか。

コラーゲンはタンパク質ですが、そもそもタンパク質とは何か?

先ず、私たちが肉を食べた場合を想定してみます。
タンパク質を食べると、タンパク質分解酵素 によりアミノ酸 に分解されて吸収されます。
アミノ酸は20種あり、これは地球上の生物全てに共通です。
分解酵素には、胃で分泌される ペプシンなどがありますが、アミノ酸分子が結合( ペプチド結合 )してできているタンパク質の結合部分を切って、アミノ酸分子に戻す働きをします。
この段階で、食べた食物によってアミノ酸の種類、その量に違いはあっても無味乾燥な唯のアミノ酸分子になってしまいます。
豚肉と牛肉の違いがないのはもちろん、私たちの肉体を構成しているタンパク質のアミノ酸分子と何ら変わりはなくなっています。

もし、タンパク質が完全にアミノ酸分子に分解されないで吸収された場合、異物として認知されて抗体が出来てアレルギー症状が出ます。
消化力の弱い方や乳幼児の場合は時として不完全な状態で吸収され、食物アレルギーに悩まされる訳です。

ところで、 狂牛病 の原因は、『 プリオンタンパク質 』と言われています。
プリオン とは、タンパク質のみで出来ている生物?のようなものです。
ウィルスが 遺伝情報 を持つ 核酸 とタンパク質から出来ているに対し、プリオンはタンパク質のみで出来ています。

プリオンは正常な動物体内にも存在し、私たちがプリオンを含む肉を食べた場合は、タンパク質分解酵素によってアミノ酸分子までに分解されて感染性は無くなってしまいます。

ところが、狂牛病の原因とされるプリオンは、アミノ酸分子の結合状態が立体的(三次元的)に変わっていて、タンパク質分解酵素に対して抵抗性を持っています。そのために、体内に入っても感染性を保つとされています。

さて、アミノ酸分子の構造ですが、1個の炭素原子に、アミノ基 -H2N(水素分子+窒素原子)と、 カルボキシル基 -COOH(炭素原子+酸素原子+酸素原子+水素原子)、水素原子 -H 、側鎖といわれる原子団 -R が付いています。

     H
     |        
  H2N - C - COOH
     |
     R

側鎖 -R に付くものによって、アミノ酸の性質が異なります。

次に、遺伝情報を持つDNAからタンパク質が合成される流れを超簡単に説明します。
DNAは互いに相補的な塩基配列 (注1)を持つ2本鎖状態になっています。
相補的というのは、色で言えば補色関係です。
赤には青緑といった感じ、どちらかが判っていれば相手の色も判ります。
DNAの場合は、2本鎖状態を解きながら、どちらか片方のDNAを鋳型にして複製を作ります。この段階を『転写 』と言います。

この複製品も当然、鋳型になったDNAとは互いに相補的で、メッセンジャーRNAといわれるものです。
ここで、複製品と本物の区別がつかなくなると心配になった方のために一言、DNAの鎖には4種類の塩基が並んでいますが、 鋳型になったDNAと複製品のRNAは塩基の種類が1個違います。

次に、メッセンジャーRNAからタンパク質の合成です。
RNA上の塩基配列は、塩基3個を1組として読み取られ、それに対応するアミノ酸分子を指定して結合させて行きます。
この段階を『 翻訳 』と言います。

コラーゲンの話に戻りますが、コラーゲン生成に必要なアミノ酸がたくさんあっても、細胞老化の命令が組み込まれていたら「コラーゲン増産命令」が出ずに無駄かも・・・・悲しい、哀しいことです。

注1: 塩基
酸と反応して塩をつくる物質。
広い意味では、他の物質か ら陽子(プロトン)を受け取る物質を塩基と定義する。