目が色彩を感じられる理由・眼の仕組み
人の眼は色彩についてはフルカラーです。
テレビやデジタルカメラは“光の三原色”すなわち、赤・緑・青紫の三色であらゆる色を再現しています。
(絵の具の三原色は、青緑・赤紫・黄です)
カメラの仕組みを大雑把に言えばレンズで結んだ像を光学フィルターで赤色の像、緑色の像、青紫の像に分け、 それぞれ専用の、光の強弱を電気の強弱に変える素子で電気信号に変え、 ディスプレイでは3色の像をほぼ同時に極めて近接で発色し、 後述する眼の錯覚を利用してカラー画像に見せています。
人間の眼の場合もカメラと同じです。
光の強弱を信号に変換する視細胞の膜は、 レチノールという色素分子をオプシンといわれるタンパクで包んでいます。
レチノールは光の粒子を受容して変形し、 その変形 にオプシンが反応して信号を出します。
レチノールを包んでいるオプシンには幾つかの種類があります。
棒状の視細胞に含まれるオプシン(ロドプシン)は、 最も感度が良くレチノールが光粒子1個を受容した変化も信号に変えられますが、 色には反応しません。
ロドプシンは青緑色光に最も良く反応し、微光しかない暗い所では黒と青緑の世界になります。
- 赤色光に反応するオプシンを持つ視細胞
- 青色光に反応するオプシンを持つ視細胞
- 緑色光に反応するオプシンを持つ視細胞
人の眼はカラー画像では識別能力が低い(色に対しては視力が悪い)のは、色については視細胞3個の面積で1点を作っているからで、2点を見分ける能力である分解能は低いのです。
色感覚を持つ視細胞の数は、赤色光の担当視細胞20個について、 緑色光の担当視細胞40個、青色光の担当視細胞1個の割合になっています。
光というのは短い波長ほど持っているエネルギー量が多いので青色に感じる視細胞が少ないのは解りますが、 赤より波長の短い緑色がなぜ多いのでしょう。
生命誕生以来、緑色の植物に囲まれて進化してきた為でしょうか。
テレビやスマホなどのディスプレイを見ているときは眼の錯覚を利用して色彩感覚を起こさせます。
例えば、ディスプレイの画面で赤と緑色の光が極近接して出ていた場合は、 空間で混ざって黄色光と感じるのではなく、
赤色光は赤色担当の視細胞を刺激し
緑色光は緑色担当の視細胞を刺激し
この2つの刺激が神経細胞の情報処理の結果として、黄色光に見えるということです。
元々の黄色光も赤と緑の視細胞を刺激するので、 眼は、本当に黄色い光なのか、 赤色光と緑色光が同時に入って来たのか区別はつかないのです。
ところで、色覚異常の方が居ます。
このような方は、三原色のそれぞれに光に反応するオプシンの1種類以上が欠損しているために起こります。
多いのは、赤と緑の光に反応するオプシンの欠損です。
このオプシンを作る情報は 性別に関係するX染色体に含まれているため、 両親から1個ずつ計2個のX染色体を貰える女性は どちらかにオプシンを作る情報が無いだけでは 赤緑色覚異常にならず、 母親から1個のX染色体、 父親からはY染色体しか貰えない男性は、 母親からのX染色体に情報が無ければ オプシンが作れずに色覚異常になってしまいます。
脊椎動物では色感覚を引き起こす視細胞の仕組みは同じなので、 色を感じる円錐状の視細胞の有無で その動物が色を感じるか知ることができ、その結果から、犬や猫、魚にもある程度の色感覚はあることが判りました。
人の流れで通行できるか判断すると言われる盲導犬も 信号の色を見ている可能性もあります。
犬は酷い近眼だと言われていますが、道路の状況が判断できるのであれば 歩行者用信号が見えないというこは無いでしょう