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微分方程式解法入門 変数分離法

現代社会を支えているのは、微分方程式と言っても過言ではありません。
電気製品や構造物を始めとして殆どの物の設計製造は、微分方程式のお世話になっています。

微分方程式とは

傾きがax=0yの値がbの直線 y=ax+b を考えてみます。
この直線をX-Y座標で表すと、下図になります。
直線ax+bをX-Y座標で表した圖
定数abの値によってこの直線は座標の何処にでも描くことが出来るので、右肩上がりで描いていますが、X軸やY軸に平行だったり、右肩下がりの直線にもなります。
この直線 y=ax+bxで微分すると
(・・・式1)dydx=a
となり、定数aだけになります。
直線を含む曲線を表す式を微分すると、その点の接線を表す式になりますから、直線 ax+b を微分したら傾きを表すaだけになるのは予想通りです。
式(1)こそが、最も簡単な微分方程式です。
そして、微分方程式を解くというのは、式(1)から元のax+b 求めることに他ならないということになります。

微分方程式 dydx=a を解いてみましょう。解くと言っても、積分するだけです。
dydxdx=adx (・・・式2)=ax+C
ただし、Cは定数(積分定数)です。
始めに掲げた直線の式は ax+b でしたから、式(2)とbが定数Cに置き換わっています。X-Y座標上でこの直線を表すと、傾きaの直線に平行な直線になります。
定数Cb に置き換えれば元の直線に戻りますが、微分方程式を解くと、元の直線にあったb は定数 C に含まれている値の1つということになってしまいます。
それで、微分方程式を解いて得た式(2)を一般解と言い、一般解の定数 Cb に置き換えて得た式を特殊解と言います。
実際は元の式が判らないですから(判って居たら微分方程式を解く必要は無い)、x=0のときは y=b になる場合の式として積分定数 C の値を B と求めます。
ここで、少し実用的な例を考えてみましょう。
高い所から質量 m のビー玉を落としたとき、ビー玉の落下速度はどうなるでしょう?
ただし、重力加速度を g、空気抵抗は無いとします。
ニュートンの運動方程式 F=ma から始めます。
Fは力、m は質量、a は加速度です。
加速度は、速度の微分で表せるので運動方程式は
(・・・式3)F=mdvdt
落ちているビー玉には、上方を + とすると mg という力 F が働いているので、式(3)は
(・・・式(4))mdvdt=mg
両辺を m で割って
(・・・式(5))dvdt=g
式(5)の微分方程式は簡単に解けます。
dvdtdt=(g)dt (・・・式6)v=gt+C
ただし、C は積分定数
ビー玉を落とした0 秒での速度が 0 という条件で式(6)の積分定数 C0 なので、ビー玉の落下速度は v=gt と求められました。

変数分離法による微分方程式の解法

右辺に定数 k と関数 y がある微分方程式の解き方です。
右辺に含まれている関数 y を求めるのですから大変そうです。前項の微分方程式の様に両辺を x で積分することは出来ません、なぜなら y は正体不明の関数だから。
そこで、dydx=ky の両辺を y で割り
(・・・式(7))1ydydx=k (・・・式(8))1ydydxdx=kdx (・・・式(9))1ydy=kdx
式(9)の左辺は x の影響を受けず、右辺は y の影響を受けないので分離されています。
積分公式を用いて
(・・・式(10))ln(y)+C1=kx+C2 (・・・式(11))ln(y)=kx+C3
対数指数の関係 ln(α)=β α=eβ を用いて
y=ekx+c3 y=eC3ekx (・・・式(12))y=Cekx
式(12)が一般解になります。C は積分定数です

コンデンサーの放電を微分方程式で解く

上記の解き方が使える問題を解いてみましょう。
下図の左側の回路では充電してあるコンデンサーCとオフになっているスイッチ、抵抗Rが直列接続されています。
この回路でスイッチをオンにした時のコンデンサーに蓄えられていた電荷量Qの変化を求めたい、という問題です。
コンデンサーの放電回路図
コンデンサーの容量は C、充電して溜まっている電荷量は Q、抵抗の値は Rとします。
スイッチをオンにすると、回路内の電圧の和は 0になるので
(・・・式(13))CCv+Rv=0
コンデンサーには、Q = CCvという関係あるので
(・・・式(14))Cv=QC
抵抗の両端の電圧Rvは、オームの法則から (・・・式(15))Rv=iR 回路を流れる電流 i は、コンデンサーに溜まっている電荷Qの時間的変化なので、
(・・・式(16))i=dQdt
式(13)に式(14)と式(15)を代入すると
(・・・式(17))QC+iR=0
式(17)の i を式(16)で置き換えると
QC+dQdtR=0 (・・・式(18))QC=dQdtR (・・・式(19))dQdt=1RQC
式(19)は、先に解いた微分方程式 dydx=ky と同じ形なので変数分離法で解きます。
式(19)の両辺を Qで割ります。
(・・・式(19))dQdt=1RQC
変分離法を適用します
1QdQdt=1RC 1QdQdtdt=1RCdt 1QdQ=1RCdt
積分公式を用いて
ln(Q)+C1=1RCt+C2 ln(Q)=1RCt+C3
対数指数公式を用いて
Q=e(1RCt+C3) Q=eC3e1RCt (・・・式(20))Q=Ce1RCt
求めた式(20)は一般解なので、 t=0 の時の電荷量 Qを与えて積分定数 Cの値を求め、特殊解を得ます。

次は、式(21)の様に右辺の関数yが二乗になっている場合ですが、両辺をyの自乗で割って、関数yを左辺に移し、右辺は定数kだけにして、積分公式を使って解きます。
(・・・式(21))dydx=ky2
変数分離をするために両辺を y2 で割ります。
1y2dydx=k 1y2dydxdx=kdx 1y2dy=kdx
積分公式を用いて
1y+C1=kx+C2 y=1kx+C2C1 (・・・式(22))y=1kx+C
式(22)は微分方程式 式(21)の一般解です。C は積分定数です。
右辺が関数yの自乗の微分方程式ですが、一般解は指数や対数も無い簡単な分数式です。