物質が色を吸収する理由
黒は色か?の中で“ 減法混色 ”という色の作り方が出て来ました。
補足しますと、補色関係にある片方の色を吸収させ、もう一方の色に見える関係を使って色を作る方法です。
黄と青は 補色関係 なので適当に混ざっていた場合は白色に見えます。
ここで黄を吸収させれば青に見えるということです。“減法混色”の代表は絵の具ですが、
さて、次なる難問が出てきました。絵の具は、なぜ特定の光を吸収するか? です。
ということで、今回の話題は【物質が色を吸収する理由】です。
光はエネルギー
その前に“光はエネルギーである”ということを確認しておいてください。
陽射しのある部屋は暖かい(暑い)という生活実感から納得して戴けると思い ます。
今回はその事については突っ込みません。「木を見て森を見ず」ということになってしまいそうですから。
ただ、色によって持っているエネルギーの大きさが違うことを憶えておいてください。 赤色から紫になるにつれて、光は波長が短いほど大きなエネルギーを持っています。
さてさて、物質を分解して行くと・・・・原子とその周りにある幾つかの電子になります。
原子を太陽とすれば、電子は水星・金星・地球・・・のような感じです。
それぞれの電子は、エネルギー準位と言われる固有の異なるエネルギー値を持っていて、しかも、それぞれの電子は中途半端なエネルギー値を持つことは許されていません(注2)
階段のように、1段目、2段目、3段目・・・・・というように段階的な値しか持てないということです。アナログでなくてデジタルです。
物質はその物質の固有の光波長を吸収する
物質中の電子の中には、自分の居場所から動こうとしない安定な電子とチャンスがあれば他の場所に行きたいと思っている不安定な電子があります。
で、物質に光を当てると・・・最初に触れましたように光はエネルギーですから物質中の電子のエネルギーが増加します。正確性は欠きますが、電子が日向ぼっこして熱々になったようなものです。
安定な電子は頑固で位置を変えませんが、不安定な電子は光からエネルギーを貰って位置を変えます。前の段落で説明した階段を昇る訳です(電子遷移と言われる)
この時、光エネルギーの一部は電子に移ってしまったのですから、その電子に移ったエネルギーの量に対応した光色が吸収されたということになります。
そして、その吸収された光色の補色関係にある色が浮き出て物質の色に見える訳です。
物質に光を当てるのを止めれば、階段を昇った電子も冷めて身分不相応な場所に居辛くなって元の位置に戻ります。
色の話とはそれますが、電子が光のエネルギー吸収し、そのエネルギーを放出するときに発光するのが、蛍光や蓄光と言われるものです。
物質によって色が違って見えるのは、光エネルギーによって動く不安定な電子が違うからです。
例えば・・・・ちょっとエネルギーを貰えば動く電子を持っている物質は赤色光(持っているエネルギー量が少ない)で間に合って赤色光を吸収します。
すると、赤の補色関係にある青緑色に見えます。
不安定な電子が動くためにはもっとエネルギーが要る物質は、紫色光(赤色光よりエネルギーを持っている)を吸収して、その補色関係にある黄色に見えます。
ここで注意が必要なのは、光の量(明るい暗い)が電子を遷移に関係するのでは無くて、光の波長が持っているエネルギーが電子を遷移させるということです。赤より青がエネルギーを持っているというように光の波長が短いほどエネルギーは大きくなります。
携帯電話・スマホやその中継局から出している電波が病気を誘発させるのではないか?と不安がる方たちに、 「太陽光を浴びていて病気にならないのにそれよりはるかに波長が長い携帯電話・スマホから出る電波が害になるはずは無い」と反論する方々がいらっしゃるのは、 電波や光波が持っているエネルギーの大小は波長で決まるということなのです。もちろん、人体への影響が波長だけで決まるわけではないでしょうが。
空気が透明な理由
空気中には“窒素”“酸素”等があるのに空気が無色な理由ですが、窒素や酸素にも不安定な電子はあるのですが、 吸収する光エネルギーが私たちの見える光の範囲に無いので見えないだけです。見えないのに手で触れられるという物質が無いのが幸いです。