偏光とは
“ 液晶 ”、“ 偏光 ”、“ 位相差(複屈折) ”・・・
これは? と一瞬思ってしまいました。これらの共通点は何だと思われますか?
答えは、『液晶ディスプレイ』です。
電卓、テレビやパソコンのディスプレイまで幅広く使われているのはご存知の通りです。 何から説明したら良いか迷ったのですが、終着点はディスプレイなので、今回は『偏光』を、さらっといきたいと思います。
偏光とは
光は、電磁波(電波)の一種です。 電波とは,電波が発生して伝搬するしくみで、電磁波は“電界(電場)”と“磁界(磁場)”が交互に作用 しながら飛んで行くと説明しました。
“偏光”というのは、“電場の向き”をいいます。
進行方向(通常はZ軸で表現)に垂直な面から見た時、 電場の向き(ベクトル)の先端の軌跡が時間が進んでも直線なのが・・・・『 直線偏光 』
電場のベクトルの先端の軌跡が楕円なのが・・・・『 楕円偏光 』
電場のベクトルの先端の軌跡が円なのが・・・・『 円偏光 』
楕円偏光と円偏光には、右回り、左回りがあります。
太陽光や電灯光などの“自然光”は、電場の向きがランダムに変わるので、『 無偏光 』或いは『 ランダム偏光 』と謂います。
通信に使われる電波の場合は、混信を防ぐ目的で意識的に電場の向き(偏波面)を利用しています。
たとえば、地上デジタルテレビの受信アンテナを垂直につけている地域がありますが、これは同一チャンネルや隣接チャンネルからの混信を防ぐためです。
テレビアンテナのような八木アンテナでは偏波面が90度異なると、受信能力が半分に低下します。
ここで、重要なポイントです。
窓に掛ける日よけのブラインドを思い浮かべてください。和風が好きな方は“葦簾(よしず)”を思い浮かべてください。
上下方向に変化(振動)している『直線偏光』の光がブラインドや葦簾を通れるか想像してみてください。
ブラインドや葦簾は非金属なので大きさを無視しても実際は通過できますが、そういうことは考えないでくださいね。
ブラインドや葦簾(葦が横方向に編んであるもの)は、横方向(左右)にはどんなに大きな波でも通れますが、上下方向に振動している波は、 ブラインドや葦簾を作っている物が邪魔して通れないと思いませんか。しかし、葦簾やブラインドを90度回転させたら通れますね。
楕円偏光や円偏光の光の場合は、電場が振動している方向が、ブラインドや葦簾の空隙の方向きと一致している瞬間だけ光は通過できます。
偏光という現象は、簡単に実験できます。
『偏光板』とか『偏光フィルター』が市販されています。
これらは、ブラインドや葦簾を超小さくしたものです。と言っても、光工学的にですが。
カメラ店で、カメラ用の『 偏光フィルター 』を買ってきて、そのフィルターを回転させながら、フィルター越しに風景を見てください。
回転の角度によって、風景画明るく見えたり暗くなったりするはずです。
これは、自然光(太陽光)の内、偏光フィルターの電場を通す向きと一致した光だけが眼に届くからです。
写真で偏光フィルターを使う用途ですが、反射光を取り除いて、はっきり写すために使うのが一番の使い道です。
例えば、ガラスケース内の物品を撮る時です。光がガラスで反射して良く見ないことがありますが、その反射してくる邪魔な光を偏光を利用して除くのです。その他、青空に浮かんだ白い雲をはっきり写す時にも使えます。
偏光フィルターを2枚重ねて、『 減光フィルター 』にもなります。減光フィルターというのは、感度の高い(ISO)カメラを太陽光下で使う時などにカメラに入る光を弱めるために使うものです。カメラのサングラスです。
ダイソーで購入(2019/05/09)した偏光サングラスで試してみた。
左は2つのサングラスの偏光面をほぼ同じ方向に重ねたもの、右は偏光面をほぼ90度ずらして重ねたもの。
偏光フィルターを減光フィルターとして使う場合は、2枚の偏光面を0~90度の間でずらして使います。
普通のサングラスは色付きで、風景に色がついて見えたりしますが、偏光フィルターを2枚使った物は、光の電場を制御して光量を調節するので色はまったくつきません。
偏光サングラスは、路面の反射や水面からの反射光を偏光を利用して抑え、路面や水中を見やすくするものです。
偏光のポイントは、『 光の電場の向きによって、通過する光量が調節できる 』ということです。