身近な自然と科学

単位について

単位は、科学分野から日常生活まで不可欠なことは言うまでもありませんが、国によって、用途によって様々なものが使われ、単なる計量の記号という意味を通り越して文化となっています。
日本古来からの“尺貫法”が廃止されようとした時、タレントの永六輔氏が、『メートルでは、家は建たない、和服は作れない』と頑強に反対していたのを思い起こす方もいらっしゃると思います。
畳やふすまなどの寸法がメートル法では何とも中途半端な値になっているのは“尺法”で作られているためです。
(1尺=約30.3センチ、着物用は約37.9センチ))
なら、建築物はメートル法に直せと言われてもすっきりはいかないのです。
土地の面積は『○○坪』と表現した方が解りやすいという方も居られると思います。
この坪は“ 1坪=6尺立方 ”ということで、元は“尺法”なのです。
土地が尺法ならその中に作る家も尺法、家の付属品も尺法が自然の流れに思えます。
また、逆に辿って、『私の部屋は6畳』と言ってしまえば、畳(たたみ)は尺法で作られているので、家は当然尺法、土地も尺法で表した方が便利かも、となってしまいます。

このように、単位と言うのは生活に密着しているだけに変えるとなると厄介な代物ですが、なぜこの長さに決めたかと尋ねられると始まりは実にいい加減なのです。
  • 重さは、草木の実などを基準、(宝石の重さの単位“カラット”が種子から来ているのは有名)
  • 長さは、 尺=手を広げた親指の先から中指の先までの長さ
  • インチ = 手の親指の幅
  • ヤード = 王様が手を水平に広げて、体の中心から中指の先まで(ヤードの本来の意味は腰周り)
  • フィート = 足の爪先から踵まで(足の長さ)
という具合に体のパーツのサイズを基準にしています。それも王様の体だったりします。

メートルを語るには重要な国・フランスでは、王様の足のサイズが長さの単位ピエ・ド・ロワ(約33センチ)でした。
これらはやがて、金属などで基準の分銅や物差しが出来たのですが、その公正さを担保しているのは時の権力者です。
時代は移り、18世紀末から19世紀にかけてのフランスでは権威からの脱却思想の台頭の中で新しい基準が生まれてきました。“水”と“地球”です。
このような何処にもある水や大きな自然物である地球に基準を求めたのは、単位が王様などの古い権威に繋がっていることを嫌ったのでしょう。
1795年フランス革命の最中“メートル”が誕生しました。

  • 1メートルは地球の子午線1周の長さの4000万分の1
  • 1キログラムは長さ10分の1メートルの立方体に純粋な水を入れた重さと定義されました。純粋な水とは“蒸留水”です。

しかし、計量の度に、いちいち水の重さや子午線1周の長さを測るのは不可能です。 それで、1799年白金で1キログラムの“確定1キログラム分銅”と“確定1メートル尺”が作られました。
“メートル”が国際的に認知されたのは1875年にメートル国際条約が結ばれ、 1899年に白金・イリジウム合金で“国際メートル原器”“国際キログラム原器”が作られ、原器の複製が各国へ配布されてからです。
現在では、1メートルは“光の速さの299792458分の1”と定義され、“メートル原器”は使われていません。

『国際単位系(SI)』についても少し・・・
1960年の国際会議で、○長さ メートル m ○質量 キログラム kg ○時間 秒 s  ○電流 アンペア A ○熱力学温度 ケルビン K ○物質量 モル mol ○光度 カンデラ cd を基本単位として、他のものを表す時は基本単位を組み合わせ(組み立て単位)て使う事に決まりました。
日本の計量法でも1995年から“SI”に移行しています。
“SI”は、国際単位系をフランス語で表記した単語の頭文字です。

組み立て単位とは

面積なら ㎡ = m m (m×mです)
力は N(ニュートン)=kg・m/s/s
電 圧は V(ボルト)= m m kg /s/s/s/A
組み立て単位を見れば表している物の本質は解るのですが、慣れないと面倒ですね。

日本古来の数の数え方もちょっと古代中国では王様が決めたといわれる
『一、十、百、千、万、億、兆、京、垓(がい)、?(し=フォントが標準でない漢字なので送れません)
穣(じょう)、溝(こう)、澗(かん)、正、載(さい)、極』となっていました。
“極”は、果てという意味で最後ということなのですが、日本ではサンスクリット数詞が加わり中国の“極”の次に『恒河砂、阿僧祇、那由他、不可思議、無量大数』無量大数は、10の86乗です。