小さな物を大きく撮影する簡単な方法
スマホに搭載されているカメラの高性能化に伴いコンパクトデジタルカメラを持つ方が少なくなったようです。
そして、百円ショップのダイソーやセリアには、スマホに付けて花などを大きく写すマクロレンズ(接写レンズ)や広い範囲を写せる広角レンズが108円で売られています。2019年7月にダイソーで見つけたスマホ用レンズは、魚眼・マクロ・広角レンズの3個セットです。材質表示がアルミ合金とABS樹脂だけなのでレンズは樹脂製なのでしょうか。
アマゾンでも2000円から2500円程度で売られています。アマゾンで売られている物が高価なのは、 レンズがガラスで、接写と広角の両用で画面の周囲が欠けないように口径の大きなレンズを使っているからか(?)
上写真の物は、凸レンズと凹レンズが付いている、ガラスレンズで作られているマクロと広角の両用です。
近くにある物を大きく写す時は凸レンズをスマホのカメラレンズの前に付けます。
広い範囲を写したい時は、凸レンズと凹レンズを組み合わせてガリレオ式望遠鏡を作り、望遠鏡の対物レンズ(凸レンズ)側をカメラのレンズに近づけ、望遠鏡の接眼レンズ側を撮りたい対象に向けます。
下写真は上写真のマクロレンズで撮ったボールペンの先と井形です。
井形を撮ってみると、画面端に行くにつれて平行線が広がっているのが判ります。近接撮影では像が歪むのは仕方が無いです。広角やマクロのレンズは、作りやすい球面レンズで作った場合はレンズの収差(理想のレンズとの差)が大きくなってしまいます。
大きく撮る為にはカメラレンズを被写体に近づけなければなりませんが、カメラにはピントが合う最短距離があり、それ以上近づいて撮るには
- マクロレンズ(注1)を使う
- カメラレンズとカメラボディーの間隔を広げる
- 接写用レンズをカメラレンズの前に付ける
上記1,2の方法はレンズ交換できるカメラでしか使えません。
私の持っているデジタルカメラはレンズ交換ができないので、3の方法になりますが、接写用レンズが市販されていますが、流石に108円では売っていません。 そこで、壊れてしまった単眼鏡の対物レンズで代用しました。
このレンズは アクロマート(注2)ですが、経験的には500円前後で売られているオペラグラス(注3) の対物レンズ(凸レンズ)でも使えます。
接写レンズで対象物に近づける距離
カメラレンズの前に凸レンズを当てると、カメラに老眼鏡を掛けたのと同じになります。 新聞を50cmぐらい離さないと読めない老眼の方が老眼鏡を掛けると、30cmぐらいでも読めるようになるのと同じ理屈で、見かけ上、カメラレンズの焦点距離が短くなり、方法2の“カメラレンズとカメラボディーの間隔を広げる”と同じになります。
ここで必要なのは物理の教科書に出て来る“ 薄いレンズの公式”は
レンズから被写体までの距離を$A$
レンズから結像点までの距離を$B$
レンズの焦点距離を$f$
とすると
私のカメラを例にして計算してみます。
広角側でレンズの焦点距離$f=5.4mm$
被写体までの最短距離$A=160mm$
として式1に当てはめると、 $B ≈ 5.59mm$
次に、このカメラレンズに焦点距離$f=100mm$の凸レンズを当てると、合成されたレンズの焦点距離$f$は
先にレンズから結像点までの距離Bを計算しました。
$B ≈ 5.59mm$
“薄いレンズの公式”に上記の$B$と$f$を入れて$A$を計算します。
この結果から、カメラレンズの前に焦点距離100mmの凸レンズを当てれば約6cmまで近づいて撮影できる事が判ります。
実はもっと早く、
レンズと被写体の距離が近づくと大きく写せる理由は、三角形の比例問題で解けるので割愛します。 注1 :マクロレンズ
接写専用レンズで、通常の撮影レンズが無限遠の被写体を対象に設計されているのに対し、このレンズは極近い所にある被写体を対象に設計されています。
簡便には、通常のレンズを逆さに付ければ代用できます。逆さというのは、被写体に向く側がカメラボディーに付く方になるということです。
注2 :アクロマート
光の色によってレンズで屈折する角度が異なる為、色によって焦点距離が異なり、結像面で色にじみとして表れます。 これを防ぐ為に、光に対する屈折率の異なる材質で作った2枚のレンズを組み合わせ、眼視で目立つ2つの色(波長)について焦点距離を合わせたレンズです。
注3 :オペラグラス
ガリレオ式望遠鏡を双眼にした簡易な双眼鏡。対物レンズは凸メニスカスレンズが多い、接眼レンズは凹レンズ。
凸メニスカスレンズは表は凸ですが、裏は凹レンズの様に窪んでいます。 1枚のレンズで少しでも良い像が出来るようにした工夫で、玩具的なカメラに使われていました。もっと古くは歴としたカメラにも使われていたレンズです。