モアレとは何か、モアレが見える理由を簡単な数式で説明
先日、小さな液晶ディスプレイに表示されるキャラクターを、デジタルカメラのムービー機能で撮影したのですが、モアレ縞が出て失敗してしまいました。
テレビに縞模様が映ると別の縞が現れて見難くくなることがありますが、この縞のことをモアレ縞と呼びます。
下写真はテレビ録画の再生画面上に現れたモアレ縞です。着ているセーターの編み目が縞であったためにモアレ縞が出現しました。
テレビ技術者さんが気を病まないように、このモアレは再生画面を極端に小さくしたときに現れたもので、通常の画面サイズでは現れませんでした。
イメージスキャナーで雑誌の写真を取り込んだときにも、モアレ低減スイッチOFFでは縞模様が出ることがありますし、簾や細かい格子戸を越しに、別の簾や格子戸を覗き込みながら移動しても縞が見えます。これらもモアレ縞です。
岩波書店の『理化学辞典』には2つの周期的な強度分布を持つ模様を重ね合わせたときに、それらの交点を結ぶ間隔の粗い模様がモアレとあります。
モアレという理由ですが、培風館の『物理学辞典』には、布にローラーで圧力を掛けて目を潰す仕上げ加工を、フランス語でモワール(moire)といい、転じて、そのような加工を受けて光った部分と光を散乱する部分ができ、縞模様を呈するリンネルをもこの名で呼ぶ・・・とあります。
数式でモアレ縞を考える
という直線上のもので表して、明と明の間隔(或いは暗と暗の間隔)をaとします。これは日光が簾や格子戸に当たって作る影を影に直角に直線で切ったものと同じです。
模様はもうひとつ必要ですから同じようなものBを用意しますが、明と明の間隔(或いは暗と暗の間隔)をbとします。
模様の明暗の強度分布は正弦関数に従うと考えて模様を数式で表すと波を表す式と同じになり
$x$は基準点からの変位
$\pi$は円周率
“1”を加えているのは振幅の大きさが負になるのを防ぐためで、今回の計算ではどうでもいい数値です、計算が面倒なので$k=1$として
$$A = 1 + \sin(\frac{2\pi x}{a}) \tag{式2}$$ 模様B
$$B = 1 + \sin(\frac{2\pi x}{b}) \tag{式3}$$
和のモアレ
式4の第2項の最初の部分
式4の搬送波の周波数は
というのは、$2\pi 〇$の“○”の部分が周波数を表しますから2で割って合わせます。
信号の周波数は
目的のモアレ縞は、低い周波数である信号部分を眼が感じていることになりますが、搬送波である高い周波数から信号部分を分離しなければ見えません。この作業を“検波”と呼びます。
ラジオなどでは半導体で行いますが、人の眼の場合には、光の強さと光に対する感応性が比例しない部分による二乗検波によって行われます。
簡単に言うと搬送波が歪んで二乗され、その結果、信号部分が分離されるのです。
ですから、模様を合わせて出来るモアレは条件によっては信号が分離されないこともあり、モアレ縞が見えないことも多いようです。 このように模様を合わせて出来るモアレを和のモアレ と呼びます。
積のモアレ
積のモアレは、格子戸越しに別の格子戸を覗くような場合に現れます。
早速計算し、嫌な理由を説明してみます。前に挙げた
$$A = 1 + \sin(\frac{2\pi x}{a}) \tag{式2}$$ 模様B
$$B = 1 + \sin(\frac{2\pi x}{b}) \tag{式3}$$
積のモアレの場合は、和のモアレと違い検波しなくても分離されているので素直に見えます。
さて、ここまでの計算でお気付きと思いますが、モアレは周波数が僅かに異なる2つの音波が作るうなりの光版とも言えます。
液晶画面をデジタルカメラのムービー機能で撮影した際にモアレの出現で失敗した話に戻ります。
液晶ディスプレイは、バックライトからの光の透過を制御する素子が縦横に並んでいる格子で、一方デジタルカメラの撮影素子も光を電気に変える素子が、 縦横に並んでいる格子の為に積のモアレが生じます。テレビ画面に出るモアレは、映っている縞模様とそれを映す為の走査線によって起こります。
モアレを除去する方法
モアレを除去する方法ですが、積のモアレは式5で解るようにモアレを引き起こすのは低い周波数なのでこれをフィルターで除去すると、本来の被写体まで除去されてしまいます。
一方、和のモアレは、モアレ成分が高い周波数に乗っているので、高域成分を除去するフィルターを通せば除去できる可能性があります。