時間は変化するということの説明
時間は何処に住んでいても誰にとっても同じというのが私たちが持っている常識です。東京、大阪、果ては沖縄、古の街である奈良に居ても、1秒間は同じ間隔を持っています。
ところが、このような常識は、思考実験が好きなアインシュタインによって打ち破られてしまいました。
アインシュタインが考えた相対性理論の中で、相対的でないものは光の速度です。 光の速度は絶対的で、何処に行ってもどんな場合でも普遍です。この事から、時間が変わることが説明できます。
光は電界と磁界が交互に生成消滅を繰り返して進む電磁波で、光粒子と波の性質の2面を持っていますが、ここでは「光は波」と考えてみます。
先ず、波がどのように進むか考えてみます。
上図の様に、小さい孔が幾つも開いた板の左側から波が寄せると、波は板に開けられた孔から出て円状に新しい波をつくり、全体では円状の波の先頭を結んだ線が新しい波面となって進みます。 進む方向は波面と直角です。
これは「ホイヘンスの原理」と呼ばれ、水面につくる波でする実験です。光も波の性質を持っているのでこのように進むと考えられます。
さて、1919年と1922年、太陽の近くを通って地球に届く恒星の観測がされました。光が太陽の重力によって曲がるか?という観測です。
もし、重力によって光が曲がるなら、恒星の見かけの位置が太陽に近づくにつれて位置計算どおりにはならないはずです。
レンズによって光が屈折するように、恒星が見える方向の延長線上には実際には恒星が無いということです。
観測結果は、アインシュタインの予想とおり、1.75秒ずれていました。
光は重力によって曲がったのです。極端に描くと、下図の様になります。
ここで、ホイヘンスの原理を思い出してください。
波の進行方向が変わるためには、板の小さな孔から生まれた円状の波の速さが、他の孔から生まれた円状の波の速さと異なれば、 全体としての波の進行方向は小さな円状の波の先頭を結んだ面と直角ですから変わることになります。
上の青線を通る円状の波から下方向に向かうに連れて波の速度が遅くなり、太陽に最も近い、下の青線を通る円状波が最も遅くなっているとから曲がると考えられます
しかし、光の速度は真空中や均一な空気中では変わりません。普遍です。
光が進まなければならない距離は青線に沿ってCからDに進む場合よりAからBを通って進む場合の方が長いので、AからBを通る光はCからDを通る光より時間が早く進まなければ追いつきません。
すると、 重力は太陽に近いほど大きいですから、重力が大きい場所ほど時間が遅れることになります。
光が曲がる話だけなく、たとえば、東京スカイツリーの頂の方が地面より重力が小さいので時間が早く進みます。
もっと身近な例はカーナビに使われているGPSです。
GPSは地面より遥か上を回っている衛星が出す電波を受信、三角測量で位置を算出しますが、衛星に積まれている時計は地面より重力が小さいので進み具合が僅かですが早くなります。
また、衛星は高速で動いているので地面の時計より遅れます。但し、重力による時間の遅れは絶対的ですが、速度による遅れは相対的です。 重力による遅れでは衛星から見れば地面の時計は遅れ、地面から見た衛星の時計は進んでいます。
しかし、速度による遅れは、地面から見ても衛星から見ても互いに相手の時計は遅れています。この進み遅れを補正しなければ、GPSでは正しい位置は求まりません。