身近な自然と科学

不確定性原理の簡単な説明

原子や電子の振る舞いになると、私たちの常識が通用しなくなります。最も不思議なのが「二重スリットの実験」と言われるものです。
遮蔽板に幅の狭いスリットを平行に近接して2つ開け、2つのスリットの間を目掛けて原子を1個撃ち込むと、波の実験で知られる干渉模様が見られるというもの。
不確定性原理の説明,二重スリットの実験
この実験では、1個の原子が同時に2つのスリットを通過したことになります。 水面につくられた波ではしばしば行われる実験で不思議では無いのですが、粒状のものが同時に二つの経路を通った推測させる不思議な現象です。 それなら、原子は撃ち出された瞬間から波に変わるのかと思いきや、観測すれば1個の原子が確認できると言います。

そこで、物理学者が考え出したのが、波動関数と呼ばれるものです。しかし、波動関数も素朴な疑問には答えてくれません。
原子などの運動量を求めるとその位置がはっきり判らない、原子などの位置を求めればその運動量が判らないというのです。これを「不確定性の原理」と呼びます。

水面に出来る波で考えてみます。
水面の位置Aから位置Bまで正弦波状の波が連続して存在する場合は、波の位置が何処にあるかは判りません。 もちろん、位置Aから位置Bまでの間にあって他には無いことは判りますが、それ以上詳しくは判りません。
今度は、波を一点に集約して水面の盛り上がりを作ります。この場合は波の位置ははっきり判ります。水の質量と波の速度が判るのでこの波の持つ運動量も判ります。

ところが、原子や電子の世界では運動量は波長に依存します。光で考えてみると解りやすいと思います。 目で感じることが出来る光の波長の外である紫外線や赤外線はどんなに強くても見ることは出来ません。目にある光受容体が光の波長を選んで反応するからです。
因みに、光が強いということは、光を粒子と考えたときに光粒子の数が多いということです。 数が多ければ光受容体に光のエネルギーが多く届くので光を感じるはずだと思いますが、電子は小さいので簡単に幾つも当たりませんし、 多くの光粒子が当たってエネルギーをたくさんもらったとしても電子は定められたエネルギー値しか持てないので反応出来ません。

もう一つ、電子に光を当てると瞬間的に電子が飛び出すという実験結果から光が粒子の性質を持つことが判りました。 光を波と考えると、電子が飛び出せるエネルギーになるまで光を吸収しなければならないので時間が掛かってしまいます。
というのは、光が波なら必要なエネルギーになるまで波を吸収しなければなりませんが、波には時間がつきまとっているので時間がかかるということです。波の高い部分から次の波の高い部分が来るまでに時間が掛かります。

話を戻して、水面の波を一点に集約したように原子の波動を一点に集約してその位置を求められるようにしてみます。 すると、今度は一点に集約してしまったので波長が判明しません。波長が判らないので運動量が判りません。波長を判るようにすると、その位置が判らなくなります。これが「不確定性原理」です。

注意が必要なのは、波動方程式は目で見ていないときの原子や電子の振る舞いを考える上で作られた数学上のものだということです。
最初のスリットに原子を撃ち込む話でも、波動として考えれば干渉模様が出来るという事実は理解できますが、原子を観測すると1個の原子が見えるだけです。 見た瞬間に一点に収縮するという都合のよい話です。

次に、電子が定まったエネルギー値しか持てない、受け入れられない理由を考えてみましょう。
太陽の周りを回っている惑星の様に、電子が原子核の周りを回っていると仮定します。惑星が太陽の周りを回っているのは引力があるからですが、 永久エネルギー機関で回っている訳では無いので回りながら太陽に近づいていきます。電子の場合も単に回っているだけなら原子核に近づいて最後には衝突します。 しかし、実際は衝突しません。
電子は原子核を囲んでエネルギーを消耗しないように定常波になって存在しています。 ですから、中途半端なエネルギーを持つと波長が変わってしまって波の山と谷がぶつかって波で居られなくなるので持つことが許されるエネルギーの値は定常波を保てる階段状(量子状)になります。