風見鶏に見る物理
風見鶏(かざみどり)というのは、西洋風建築物や寺院の屋根上や塔上に設置されていることがある、下写真のような、鶏をかたどった風向計です。
雄鶏は早朝に声高く鳴くので「雄鶏は時を作る」と言われますが、鶏は風の吹いてくる方向を向く習性もあるのでしょうか?
冷たい北風のときには、鶏に限らず、動物は冷気にさらされる体表面積を少しでも少なくなるように、また体毛の間に冷気が入り込まないように風の方向を向くと思いますので、ことさら鶏でなくてもかまわなかったと思います。
それとも、ギリシャ神話などでは病魔は風に乗ってくるというので、病魔の見張り役は勇ましい雄鶏が良いと思ったのでしょうか・・・
風見鶏の由来はともかく、鳥をかたどるなら尾羽が立派でなければならない理由は科学的にあります。
下写真は雌鳥に似せて切った厚紙の風見鶏です。
中央より左側に緑の縦線に見えるのは鉄線で、この鉄線を中心に水平方向に自由に回転できるように支えていると、鉄線が写真の位置では辛うじて風の方向を向きますが、鉄線を右側に移すと不安定な動きになり、回転してしまうことさえあります。
回転させようとする力は、力の大きさと、その力が働いている点から回転の中心Oまでの距離までを掛けて求められます。
下図では、
回転させようとするモーメントM1はd1×F1
回転させようとするモーメントM2はd2×F2
風見鶏の頭を風上に向けるためには頭に働くモーメントより尾に働くモーメントを大きくする必要があります。
このためには、尾にたくさん風が当たるようにし、かつ、回転軸と尾までの間隔を、回転軸と頭までの間隔より大きくする必要があります。
実際に設置されている風見鶏(最上部の写真)を見てみましょう
回転軸は雄鶏の左右の脚の間にあります。
回転軸を上方に延長すると、雄鶏の頭部で、この回転軸より右側の部分はほとんど無く、左側(尾の方)が大部分を占めていることが判ります。
それでも、軸受けの摩擦などがあってモーメントが足りないのか、雄鶏の尾の下に矢羽が付いています。
モーメントの大小は直感的にも理解できることですが、風向計も同じ原理なので、夏休みの自由研究などで風見鶏や風向計を作ろうと思っている方は、上記の点を考えて作ってください。