赤外線放射温度計の較正?
閉め切った室内の、直射日光が当たらない場所に、アルミ箔、プラスチックダンボール(プラダン)、茶色のダンボール紙を放置して、 放射率0.95固定の赤外線放射温度計(SainSonic ss5380 サインソニック 非接触式 赤外線放射温度計 レーザーポインタ付)で表面温度を測ってみました。
室温10度、アルミ箔15度、プラダン12.4度、ダンボール紙12,6度
アルミ箔の測定では、アルミ箔に向ける赤外線放射温度計の角度で示す値が大きく変化しました (反射率が高い物を計るときは、測る物の面と直角に放射温度計を向け、他から放射された赤外線が測定面に当たらないようにします)
アルミ箔の温度が高く出たのは、反射率が高い(放射率が低い)からです。 アルミ箔の放射率ほどでないにしても金属は放射率が低いので放射率が固定されている機種では温度が高めに出てしまいます。金属の温度を測るときは放射率を合わせられる赤外線放射温度計を用いるか、専用のテープを貼ります。
赤外線放射温度計の計測物として適しているものは意外にも水や氷です。 放射率が固定されている放射温度計の放射率は0.95が多いようですが、赤外線放射温度計が使用する赤外線の波長領域の、 水の放射率は、0.92~0.96 、氷の放射率は、0.96~0.98 と、ほぼ一致しています。
試しに水の温度を測る実験をしてみました。
浴槽(金属光沢のあるステンレス製)のステンレス面に赤外線放射温度計を向けると、8度を示しました。(実際はもっと低いはずですが)
浴槽に水を入れ始めると、放射温度計は直ぐに15度を示しました。水の中に入れた実験用棒状温度計は14.5度でしたから、家庭用温度計では許容範囲です。
次は大きな鍋で水を沸騰させて熱湯の温度を測りました。棒状温度計は98度、赤外線放射温度計は102度でした。この値も許容範囲でしょう。
この例で解かるように、手許にある赤外線放射温度計が正常に機能しているかどうかは、水温を測ってみれば判ります。 実験はしていませんが、0度を示すものは、氷をたくさん入れた氷水です。 赤外線放射温度計の較正(校正)と言ったら言い過ぎですが、値が大きくずれているかどうかぐらいは上記の方法で判ります。
ただ、注意しなければならないのは、赤外線放射温度計は水面の温度を測っているということです。 しかし、理科の実験などで使う棒状温度計、或いは温度変化を電気抵抗の変化などに変換して表示する電子式温度計などは水中の温度を測っています。
ですから、このままでは温度計の値が違ってしまいます。そこで、赤外線放射温度計で測るときは水をよく掻き混ぜ、水面と水中の温度が同じになるようにします。
更に、測定する水面に他からの赤外線が当たらないようにし、赤外線放射温度計が測定する範囲いっぱいに測定する水面が入るようにします。
因みに、赤外線放射温度計は真っ暗な所でも測れます。ただ、空気の温度は空気の放射率が低いので測れません。