身近な自然と科学

大気圧を利用した汲み上げポンプ

井戸の水汲み上げポンプをご存知でしょうか。ポンプと言っても電動では無く、自転車の 空気入れポンプのように手で動かすものです。
井戸水汲み上げに使われていた手押し水汲みポンプ
昭和40年代ぐらいまでは上水道と併用で使っていた家がありましたが、今では見かけることが無く、見かけても庭のオブジェになっています。

この汲み上げポンプの仕組みです。地下の水溜り(水脈)にパイプを差し込み、パイプの上部(地上)にはシリンダーとピストンからなるポンプが付いています。 簡単に言えば、遊具の水鉄砲を逆さに付けたと思ってください。水鉄砲の筒がシリンダー、その中に入っている水を押し出す物がピストンです。 逆さというのは、水が吹き出る筒の先が下になってパイプに接合されている状態です。
手動井戸水汲み上げポンプの原理図
ピストンを上方に上げると、パイプ内とシリンダー内の容積の和が増えるので パイプの中の気圧が下がります。 すると、地下の水溜りに掛かっている大気圧によって、 水がパイプの中を上昇します。

このポンプは簡単な構造ですが、水を汲み上げるのに大気圧を利用しているので、パイプ中の水が水溜りの水面から何処まで上昇するかはパイプ内と大気圧の差によります。 この差が最も大きいときの値は通常1気圧です。1気圧は水銀柱760mmなので、押し上げられる水の高さhは、
h×1.0(水の比重)=76.0×13.5(水銀の比重)
h=1026cm となって
h=10.26mとなります。
このために、深さ約10メートルより浅い井戸からしか汲み上げることが出来ません。