身近な自然と科学

遠距離恋愛にまつわる似非科学

世の中には凄い理論を振り回す方がいらっしゃいますね。 遠距離恋愛がうまく行くという根拠に物理学の量子論が出してきます。
量子論というのは、原子や電子、素粒子といった非常に小さいものを考えるときに必要なもので、相対性理論という理解し難い理論を創り上げた超天才のアインシュタインさえ「神はサイコロを振らない」と悩ませた理解し難い理論です。
ここで使われている科学は、スリットが2つある壁に向けて量子論の対象になるような超小さい物をひと粒発射すると、壁の向こうに波紋が出来るという有名な話です。
量子論 1粒が2つのスリットを同時に通って波紋を作る
壁の向こうに波紋が出来るためには、下図の様に壁に向けて発射した粒が二つのスリットを通り抜けて波源を二つ持って干渉縞を作らなければなりません。
二つのスリットを通って波紋が出来る説明図
たとえば、私たちが野球やテニスに使うようなボールを投げたときを考えると、スリットが2つあってもボールはどちらか一方しか通ることが出来ないので、何回投げても波紋は出来ません。
しかし、投げたボールが波に変化してスリットが二つある壁に到達したと考えれば、二つのスリットを同時に通り抜けてそれぞれが波源になって干渉縞を作ることは理解できます。
ということで、量子論の対象になるような超小さい物は波と粒子の二つの性質を持つと考えられています。

ここで、遠距離恋愛の話に量子論を当てはめた人は、人も原子などで作られているので、同時に二つのスリットを通った原子の様に同時に2箇所に居られるというのです。
実体がある人が同時に二ヶ所に存在出来ないのは誤魔化しようが無いほど明らかなので、魂みたいな精神的な、自分でも気づかないもう1人の自分が居るという論法なのでしょうか。
しかし、原子1個、或いは電子1個では複雑な情報を伝えることは出来ません。原子と電子の数によって化学的にはこれ以上分解できない元素、たとえば水素や鉄などが出来ています。 これらの元素の組み合わせによって私たちの身体を作り、私たちを生物にしている重要物質であるタンパク質が出来ています。
こう考えると、空間を移動出来るような魂なるものが存在したとしても、それが原子とか電子の単独では有り得ないことになります。(人の眼やカメラに写るかは別問題です)
原子が多数集まって塊になったら量子論の世界では無くてニュートンさんの出番になります。 ニュートンの考えでは、二つのスリットを同時に通過することは出来ないので、同時に二つ場所に存在できる根拠が失われます。

現代科学では否定されているからといってそれが嘘だとは言い切れませんが、それを信じさせるために下手に科学を使うと墓穴を掘ります。
しかし、お互いに相手を思いやる心が自分の近くに相手の創り上げるのは確かなのでしょう。